奈良&京都見聞録(2) 春日大社、千三百年を共に生きた神と人

投稿日:2018年12月27日 更新日:

◆前回の記事はこちら >奈良&京都見聞録(1) 旅のお題とガイドライン

※ 本稿は2018年12月16日の記録を、12月27日にアップしたものです。

ホテルから春日大社へ

奈良市三条通り

 12月16日(日)、午前8時前にホテルを出発する。日曜日の朝とあって、まだ街は目覚めていない。人通りがまばらな三条通りをまっすぐ東へ向かう。春日大社まで約3kmの道のりである。体が温まってくると、朝の冷え込んだ空気が逆に心地よい。

 街並みがきちんと整備され、すっきりして見える。不思議に思ってよく見ると、電柱・電線が全て撤去されているのだ。看板も控えめで、街並みの景観も調和がとれている。古都の景観を守ろうとする意欲が感じられる通りである。マンホールの蓋にも鹿の絵が刻印されていて、微笑を誘う。

奈良市マンホール蓋

 猿沢の池を右手に見て、左に興福寺の五重塔が目に入ると、まもなく春日大社「一の鳥居」が見え始める。この鳥居をくぐると、30万坪におよぶ大社の境内となる。「平成三十年 御創建千二百五十年 春日大社」の立て札が、鳥居の横に設置されていた。

春日大社一の鳥居

 

千三百年を共に生きた神と人

春日大社境内

 朝の神社は清々しい。静寂の中、厳粛な空気がたちこめ、身も心も引き締まるようである。差し込む木洩れ日の美しさに思わず見とれてしまう。参道を進み、本殿に近づくにつれ、「御神域」という言葉がじんわりと実感される。

春日大社境内

 平安末期の歌人、西行は伊勢神宮に参拝し、

なにごとの おはしますかは 知らねども
かたじけなさに 涙こぼるる

と詠んだ。誰も何も言わなくても、ただありがたく畏れ多く、「思わず手を合わせてしまう」思いを詠んだと言われる。

 自然の中に人智を超えた存在(神々)を感じ、ありがたさに手を合わせたくなる。日本人にはごくごく当たり前の心情である。この境内に立つと、その西行の気持ちがよく分かる。

 春日大社については、Wikipediaで次のように紹介されている。

 春日大社(かすがたいしゃ)は、中臣氏(のちの藤原氏)の氏神を祀るために768年に創設された奈良県奈良市にある神社。旧称は春日神社。式内社(名神大社)、二十二社(上七社)の一社。旧社格は官幣大社で、現在は神社本庁の別表神社。神紋は「下がり藤」。
 全国に約1000社ある春日神社の総本社である。武甕槌命が白鹿に乗ってきたとされることから、鹿を神使とする。ユネスコの世界遺産に「古都奈良の文化財」の1つとして登録されている。

(出展:春日大社/フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia))

 苔むした石燈籠がどこまでも続く参道を進めば、この神社が千年をはるかに超える長い歴史を持ち、いかに多くの人々の信仰を集めてきたかがよく分かる。平安時代から現在まで奉納された石燈籠は二千基、釣り燈籠は千基、合わせて三千基を越えるそうだ。

春日大社石灯篭

 境内をていねいに掃き清める「御巫(みかんこ)」さん。境内の清浄を保つため、社殿のお清めや参道の掃除を神職、御巫全員で、毎日欠かさず行っているそうである。

 御巫さんは皆、藤の花のかんざしを付けている。襟の形が変わっているので尋ねてみると、「八枚襟」と呼ばれる装束で、10月から5月の正装であるとか。緋色と純白のコントラストが美しい。

春日大社巫女

 20年に一度、社殿や宝物の修築・補修を行う「式年造替(しきねんぞうたい)」を2016年に終え、丹塗りの社殿はまだ色鮮やかである。下から仰ぎ見ると、その朱色の迫力に圧倒されるようだ。

春日大社

 社殿の軒下や回廊にずらりと下げられたおびただしい燈籠。金色に輝く新しい燈籠よりも、歳月を経てくすんだ緑に変化した燈籠に興趣を感じるのは、小生の年齢のせいだろうか。

春日大社

 ずらりと並んだ釣り燈籠には、寄進者の願いが刻まれたものが多い。このお社が千三百年にわたり、多くの祈りを受け入れてきたことがよく分かる。

※ 春日大社の三千基の燈籠に火をともす、「萬燈籠(まんとうろう)」の映像が見たくなり、ホテルに帰って YouTube を検索してみた。
 そこで見つけた動画を紹介させていただく。JR東海のプロモーション・ビデオのようだが、春日大社の特長と美しさが、実にうまくまとめられている。
 わずか2分44秒の動画だが、これをご覧になったあなたは、きっと春日大社を訪れたくなるであろう。

 


※ シリーズ「奈良&京都見聞録」関連記事はこちら  >

 

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