(出典:Pixabay)
えっ? 「どうして勉強しないといけないの」だって。う~ん、むずかしい質問だね。
そういえば、君のパパも小学生の時にそんなことを尋ねていたなぁ。もう30年ちかく前の話だ‥‥。
「ぞうさん」って歌、知ってるかい。あの「ぞうさん」って童謡を作詞した、まど・みちおさんの詩がヒントになるかもね。
朝がくると
まど・みちお朝がくると とびおきて
ぼくが作ったものでもない 水道で顔をあらうと
ぼくが作ったものでもない 洋服を着て
ぼくが作ったものでもない ごはんをむしゃむしゃ食べるそれから ぼくが作ったものでもない本やノートを
ぼくが作ったものでもない
ランドセルにつめて 背中にしょって
さて ぼくが作ったものでもない靴をはくと
たったか たったか 出かけていく
ぼくが作ったものでもない道路を
ぼくが作ったものでもない学校へとああ なんのために
いまに おとなになったら
ぼくだって ぼくだって
何かを作ることが できるようになるために
ある日、「ぼく」は自分の周囲にある物すべてが、どこかの誰かが作ってくれたものだと気づいたんだ。自分で作ったものなんて何ひとつない。
たとえば「水道」についてよく考えてみると、目の前の蛇口を作った人や取り付けた人、水道管や貯水場やダムを作った人、それらの施設を動かしている人、下水の処理に関わってくれている人……。
数え切れないほど多くの人々によって、自分の生活が支えられていることが分かったんだろうねぇ。「洋服」や「ごはん」や「本やノート」についても同じなんだ。
君が吸っている空気、差し込んでくる太陽の光や周りの自然はどうだろう。自分が作ったものかな? 君の体や命は……? そう、我々は想像もできないほど多くの人やモノや自然に支えられ、生かされているんだね。
では、詩の最後の3行をよく読んでごらん。
いまに おとなになったら
ぼくだって ぼくだって
何かを作ることが できるようになるために
「ぼく」は「おとなになったら何かを作」って、どうしたいのかな? なぜ、大人にならないとダメなんだろう。
ほら「どうして勉強しないといけないか」、答えが分かってきただろ。
えっ? 君のパパに私が何と答えたかだって?
じいちゃんは、小学生だった君のパパにこう言ったんだ。
「まず自分が〇〇〇〇になるため。そして回りの人を〇〇〇〇にするため」ってね。
○○○○にはひらがな4文字が入るんだ。君のパパは覚えているだろうかねぇ。
出典:Pixabay
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