あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(43) 合唱曲「群青」、ふるさとでの再会を誓った希望の歌

投稿日:2021年2月1日 更新日:

作詞は中学生、作曲は音楽の先生

出典:Pixabay

 「群青(ぐんじょう)」という合唱曲があります。今から8年前に生まれ、様々なメディアで紹介されました。この数年、全国の中・高等学校で歌われる機会が増えてきたので、知っている人も多いことでしょう。

 昨年、私はふとしたきっかけでこの曲の存在を知り、中・高生が合唱している動画を数本視聴してみました。聴いているうちに自然に目頭が熱くなり、心が震えてきたことを覚えています。すばらしい曲です。

 動画の画面を見ると、作詞は「福島県南相馬市立小高(おだか)中学校 平成24年度卒業生」とあります。中学生が作詞した曲? 作曲はどうやら同じ中学校の先生のようです。今日はこの曲が作られたいきさつを、みなさんに紹介したいと思います。

 合唱曲「群青」が生まれるまでには、次のようなドラマがあったようです。

津波と原発事故、2つの大災害に見舞われた町

東日本大震災の被害を受けた南相馬市小高地区 Daisuke TSUDA – Flickr: CIMG0399.JPG, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14931564による

 2011年3月11日、卒業式を終えた小高中学校を東日本大震災が襲ったのは午後2時46分。観測史上最大と言われるマグニチュード9の激しい地震、その後に沿岸部を襲った波高9m以上の巨大津波により、南相馬市は多大の被害を受けました。同校でも生徒4名の尊い命が奪われ、多くの生徒の自宅が破壊されてしまいました。

 さらに不幸が続きます。津波による被害で福島第1原子力発電所がメルトダウンを起こし、広範囲な放射能汚染が起こったのです。原発から20km圏内にあった小高地区の住民たちは、全員が住み慣れたふるさとを離れ避難せざるを得なくなりました。

 全国に散らばった生徒たちは、避難先で福島から来たというだけでいじめに会い、白い目で見られ、深く傷ついていきました。

出典:Pixabay

 一方、南相馬市内の仮設住宅や避難所で生活する生徒たちは、汚染区域外に位置する鹿島中学校の仮設校舎で学校生活を送ることになりました。

 鹿島中学校には4つの中学校が間借りをしており、環境や校風の違う5校が同じ敷地に集まったことで、生徒のストレスはさらに増大していきます。

 12〜15歳という最も多感な時期に肉親や友人を失ったこと、津波で自宅を奪われた不便な生活、突然の友人との別れ、ぎゅうぎゅう詰めの仮設校舎‥‥。想像もできないほどの過酷な環境の中、学校は荒れに荒れたそうです。

 抱えきれないほどの不安や悲しみに押しつぶされそうになりながら、自分をうまくコントロールできずに苦しむ日々‥‥。想像するだけで、胸が痛みます。

 

傷つき、歌えなくなった生徒たち

 当時、小高中学校で音楽を担当していた小田美樹先生は、授業がどうしてもうまくいかず苦しみ続けていました。ピアノで前奏を弾いても、生徒たちが歌えない(歌わない)のです。言葉が出ないまま、全員押し黙ったまま立っているだけだったといいます。

 特に希望や未来をテーマにした曲や、安易な復興支援ソングなどは全く歌えなかったそうです。

 「この子たちの思いを表現した歌でなければ」と考えた小田先生、生徒の授業中のつぶやきや、日記や作文に書かれた言葉を拾い集めて歌詞に再構成し、メロディーをつけてやりました。

 こうして生まれたのが、合唱曲「群青」です。「群青」とは小高の海の色であり、校歌の歌詞や学校行事(文化祭は「群青祭」)、野球部の名称に使われるなど、ふるさと小高を象徴する言葉でした。

 生徒たちは、「また会おう 群青の町で」と結ばれるこの曲を泣きながら歌ったそうです。

 

故郷の町で友との再会を願う曲

 「群青」を聴いたことのない方は、耳を傾けてみてください。動画の下に歌詞ものせておきます。 

◆ 小高中学校平成24年度卒業生が歌う「群青」。復興支援コンサート「Harmony for Japan 2013」の様子 指揮は小田先生のようです。

 合唱曲「群青」

詞 福島県南相馬市立小高中学校 平成24年度卒業生
曲    小田美樹(福島県南相馬市立小高中学校 教諭)

ああ あの町で生まれて君と出会い
たくさんの思い抱いて 一緒に時間(とき)を過ごしたね

今 旅立つ日 見える景色は違っても
遠い場所で 君も同じ空
きっと見上げてるはず

「またね」と 手を振るけど
明日も会えるのかな
遠ざかる 君の笑顔今でも忘れない

あの日見た夕日 あの日見た花火
いつでも君がいたね
あたりまえが 幸せと知った

自転車をこいで 君と行った海
鮮やかな記憶が
目を閉じれば 群青に染まる

あれから二年の日が 僕らの中を過ぎて
三月の風に吹かれ 君を今でも思う

響け この歌声
響け遠くまでも あの空の彼方へも
大切な 全てに届け

涙のあとにも 見上げた夜空に
希望が光ってるよ
僕らを待つ 群青の町で

ああー
きっと また会おう
あの町で会おう 僕らの約束は
消えはしない 群青の絆

また 会おう 群青の街で‥‥

 共に過ごした日々、離れて暮らす友への思い、ふるさと小高への思い‥‥。生徒たちの素直で率直な言葉と、彼らを見守り続けた小田先生の願いが一体となり、聴く者の心にしみ込んでいくようです。

 歌詞の中に「希望が光ってるよ」というフレーズを見つけ、本当に嬉しくなりました。

 

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