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映画『人生フルーツ』、歳を重ねるほど人生は美しくなる (2)

投稿日:2018年10月4日 更新日:

つばた英子さん 人生フルーツ

(出典:映画『人生フルーツ』パンフレット)

◆前回の記事はこちら >映画『人生フルーツ』、歳を重ねるほど人生は美しくなる (1)

 前回では、映画『人生フルーツ』が実に素晴らしいできばえで、小生はすっかり参ってしまったと書いた。

 「すっかり参った」理由は、「豊かに生きたものこそ、豊かな死を迎えることができる」という事実が、まぎれもなく映像化されていたからである。ワンカットで30秒ほど撮られた、津端修一さんの「最期の顔」は、その実り多い人生を象徴するかのように安らかで満ち足りていた。

 『人生フルーツ』の魅力について改めて考えてみようと、前回の続きをアップすることにした。

 

『人生フルーツ』の3つの魅力とは

人生フルーツ

(出典:前掲パンフレット)

 「こういう晩年を過ごすために、自分はいま何をすべきか。本作を観てからずっとそのことを考えている。」(山崎 亮)

 小生も同感である。「こういう晩年」を過ごせたら幸せだろうなとつくづく思う。『人生フルーツ』のどこが我々の心を揺さぶるのか。1時間31分の作品だけでは、明確なイメージはなかなか浮かんでこない。

 お二人の著作にも目を通し勝手に整理してみると、次の3点が作品の魅力として指摘できそうだ。

  1. 見事で美しい「老」と「死」の実例が確かに在る。
  2. 「ときをためる」生き方が「老」を輝かせる。
  3. 夫婦円満の鍵は、「同じ方向」を向き「すき間」をつくること。

 

魅力1: 見事で美しい「老」と「死」の実例

津端修一 人生フルーツ

自作の燻製炉でベーコンをいぶす(出典:『ききがたり ときをためる暮らし』)

 私たちが必ず迎える「老」と「死」、マイナス・イメージで語られることの多いテーマである。しかし『人生フルーツ』を観終えると、老いることへの希望がじんわり湧いてくる。このようなご夫婦が確かに実在すると確認できただけで、嬉しくなってくる。「老いることへの希望」、これが観客の心をとらえた本作最大の魅力なのだと思う。

 本作のパンフレット表紙には、タイトルのすぐ下に “Life is Fruity.” と印字されている。直訳すれば「人生はフルーツのようだ」となる。「人生は、フルーツのように(甘美である。みずみずしい。豊潤である)」という意であろうと、勝手に解釈している。

 仄聞するところによると、初めてこの作品タイトルを耳にした英子さんは、「修一さんにぴったり」と言って喜んだと聞く。「美しく老いる、だんだん美しくなる人生」は修一氏の口ぐせだった。

 伏原健之監督は、本作制作の動機を次のように語っている。

 私は普段、テレビ局で報道の仕事をしている。ニュースでは、年をとることをネガティブに伝えている。超高齢化社会、老老介護、貧困老人、孤独死などとあおる。こうした状況に違和感があった。そんな悲しい人生ばかりではないはず。できれば、カッコいいおじいさんになりたい。どこかにお手本になるような、人生の師はいないものかと探していたところ、地元紙で修一さんのことを知った。「人生は、だんだん美しくなる」と言っていた。‥‥(略)‥‥この世界には、夢のような現実もあるはずだと信じていた。私は、柔らかくて、ゆるりとした、ファンタジーのような物語を作りたかった。

(「監督日誌」、伏原健之、映画『人生フルーツ』公式パンフレット)

 まさに「わが意を得たり」である。そうなのだ、小生も「できれば、カッコいいおじいさんになりたい。どこかにお手本になるような、人生の師はいないものかと探していた」のである。修一氏を拝見した時、「こんなふうに年をとりたい」と思わせるような、良きロールモデルを発見した思いであった。

 女性の方々は、英子さんにシニアライフの「お手本」を見いだされたのでは、と推察する。

人生フルーツ

自宅屋根にて眺望を楽しむ(出典:『ふたりからひとり』)

 修一氏の「カッコいいおじいさん」ぶりを幾つか紹介してみると、

  • 他人に頼らない。できることは何でもやる。「本当の豊かさというのは、自分の手足を動かす暮らしにある」が信条。船、丸太小屋、ベビーベッド、ドールハウス、燻製炉‥‥。自分で工夫して作り、とことん活用する。90歳にして、「やりたいことは、まだ、たくさん企画してあるんですよ」とおっしゃる。
  • 66歳と68歳の時に、タヒチにヨットクルージングに出かけた。88歳(!)になってもタヒチに一人でヨットクルージングに出かけ、「米寿の青春」を満喫されたとか。ヨットで過去6回もの遭難に遭いながら、全て生還したタフガイ。
  • 建築と都市計画に対する揺るぎない哲学と信念を持つ。第一線から身を引いて50年、90歳にしてなお現役として活躍可能なスキルを保持している。自然との共生をめざす医療福祉施設「山のサナーレクリニック」(佐賀県伊万里市)から相談を受けたその場で、設計草案をすらすらと書き上げる。
人生フルーツ

作業場にて(出典:『ききがたり ときをためる暮らし』)

 英子さんのカッコいいおばあさんぶりも、枚挙にいとまがない。男性である小生でもわかるカッコよさを挙げると‥‥

  • 「食は命」が信条。自宅キッチンガーデンで自ら育てた70種の野菜と50種の果実を、美味しいごちそうやお菓子に変える。
  • 刺繍・編み物・機織りまで、何でもこなす魔法の手を持つ。自作のマフラー、靴下など手作りの品をプレゼントするのも楽しみ。
  • 「動けば動くほど、動けるようになる」、「人のためにやっていることは、自分のためなの」が口ぐせ。
人生フルーツ

(出典:前掲『ふたりから』)

 映画『人生フルーツ』は、どうしたら豊かな老いを生きることができるのか、その日々の実践を具体的にわれわれに見せてくれる。歳を重ねることが楽しみに思えてくる作品と言えよう。

人生フルーツ

「コックピット」と名付けた仕事場で(出典:前掲『ふたりから』)

 

◆本記事の続きはこちら >映画『人生フルーツ』、歳を重ねるほど人生は美しくなる (3)

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 前回では、映画『人生フルーツ』の魅力として次の3点が指摘できそうだ、と述べた。1 見事で美しい「老」と「死」の実例が確かに在る。 2 「ときをためる」生き方が「老」を輝かせる。 3 夫婦円満の鍵は、「同じ方向」を向き「すき間」をつくること。
 今回は、その続きとなる。

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