あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(51) 試験の点数で分かるもの

投稿日:2021年12月16日 更新日:

出典:Facebook 小玉宏(たまちゃん) 

 ずっしりと重そうな稲束を抱えて笑うこの人、小玉宏(こだま・ひろし)さん(自称「たまちゃん」)です。
 大分県国東市で「たまちゃんファーム」を設立。自然農法を実践しながら全国を講演して回っています。

 小玉さんは、かつては宮崎県で中学校の先生をされていました。その頃、「ヤンキーの生徒」とこんなやり取りがあったそうです。

試験の点数で、人間の値打ちは分からない

 たまちゃんが教員だった頃、ヤンキーの生徒からこう言われました。
「先生、何で入試なんてあるんですかね。試験があるから、俺たち頭の悪い人間が落ちて泣かなあかんやないですか。」

 で、たまちゃんはこう答えました。
 「あのさ、あの学校に行きたいっていう奴はいっぱいいる。でも、全員が希望する学校に行けるわけないやろ。たとえば、イスの数が決まってる。100席しかない学校は100人しか取らんのよ。300人、400人来てもイスが無いからね。だから100人に絞らんといかんの。じゃあ、どこで線引きするか」

 するとその子は言いました。
 「試験の点数でしょ。だからダメなんですよ。試験の点数で人間性なんて分かるわけないじゃないですか」って。

 「確かにその通り。試験の点数で人間性なんて分からん。でもな、試験の点数で分かるものが一つだけある。お前の本気さ加減だ。お前が本気かどうかはテストの点数で分かるんよ。本当にあの学校に行きたかったら本気の努力をするやろう? それがテストの点数に出るんよ」

 そう言うとその生徒は黙ってしまったので続けてこう言いました。

 「お前が本気で行きたいんだったら、受験勉強なんて楽勝でできるから。でも、大して行きたい理由もないのに『友だちが行くから』とか、『親がここ行けって言うから』とか、そんな理由だったら本気で頑張り切れるわけないやん。そんなのが点数に出るんよ」

 「あの学校に行きたい」と本気で言った生徒で一番すごかったのは、当時5教科の合計点数が7点だった女の子でした。
 分かりますか? 5教科の合計点数が7点の子って、皆さんと住んでる世界が全く違うのよ。

 皆さんは1教科7点でも「もう人生終わった」と思うでしょ。その5教科の合計7点の子は、「どうしてもあの学校に行きたい」と思って本気で我武者羅に勉強したんです。

 その結果、270点を取って、見事その志望校に通りましたね。そんなもんですよ。本気でやれたかどうかっていうのは点数に出てくるの。

 でも、人間性は出てこないよ。だからたまちゃんはいつもこう言ってました。「点数が悪かったからと言って、おまえたちはダメな人間じゃないからな」って。

(出典:「試験の点数にはあなたの本気さ加減が現れる」(講演家/筆文字作家 小玉宏、『日本講演新聞』2021年12/13 2910号掲載)

 

入試は何のために行われるのか?

 たまちゃんの話で面白かったのは、「試験の点数で人間性なんて分かるわけないじゃないですか」と言った生徒の発言。
 どうやら、「人間性」を評価しない入試システムが不満のようです。

 たとえば、オリンピックの体操競技やフィギアスケートを思い浮かべてみましょう。両方とも審査員が採点を行って順位を決める競技です。
 もし選手が「採点項目に人間性が入っていないのはおかしい」と言ったら、審査員はどんな顔をするでしょう。

 「人間性という漠然としたものをどうやって評価するのか、教えてくれないか。」と返されるかもしれません。

 これと同様に、入試で判断されるのはその学校で学ぶだけの「能力と適性」を備えているかどうか。人間性は関係ありません。
 ちなみに「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ)が、人間の値打ちを判断する基本だと思いますよ。

 

「本気」で頑張った人 

 たまちゃんのエピソードでは、5教科合計7点の女の子が紹介されていました。私も皆さんに本気で頑張った人物を二人紹介することにしましょう。

 まず宮本延春(みやもと・まさはる)さん。小学校の頃からひどいいじめで学校嫌いになり、勉強も大嫌いだったそうです。中学1年生の通知表はオール1。 

 中学を卒業する時には、漢字で書けるのは自分の名前だけ、英語の単語は”Book” だけしか知らず、九九は2の段までしか言えない極端な「落ちこぼれ」でした。
 高校には進学せず、中卒で見習い大工として就職。16歳で母と18歳で父と死別し、全く天涯孤独の身だったとか。

 23歳で物理学に興味を持ち、猛勉強の末に地元の定時制高校に合格。その後も仕事をしながらが勉強を続け、27歳で名古屋大学理学部に見事合格した方です。

 ※ 宮本さんについては、本シリーズ「あとからくる君たちへ」で2018年11月に一度紹介しています。興味があれば当時の記事を閲覧してみてください。

 入試とは無関係ですが、本気で頑張った人をもう一人。

出典:NHK(日本放送協会)

 今年開催された東京パラリンピックの卓球選手。両腕を失ったイブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥさん(エジプト)が、ラケットを扱うのはなんと口。首の力を使って、見事なスマッシュを左右に打ち分けていました。
 両腕がないのにどうやってサーブを打つのかって? 興味がある方は、こちらの動画(57秒)をどうぞ。

 「勝つつもりでいたので(負けて)とても悔しい」という言葉が印象的でした。

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