「大きくなったらJリーグの選手に‥‥」なれない時は
私には2人の孫がいます。2人とも男の子で、上の孫は5歳、下の孫は1歳です。上の孫はサッカーが大好き。週1~2回、地元のサッカースクールに通っているようです。そのうち「大きくなったらサッカー選手になって、Jリーグで活躍したい」なんて言い出すことでしょう。
ちなみに、小学生の「大人になったらなりたいものランキング」(2018年、第一生命ホールディング社発表)では、男の子は1位がサッカー選手、2位が野球選手、3位が学者や博士。女の子は、1位が食べ物屋さん、2位は保育園・幼稚園の先生、3位は看護師さんだったそうです。あなたは、どうでしたか?
大きな夢を抱いて、ワクワクしながら生きている子どもたちの姿を見ると、できる限りの応援をしてやりたくなります。
ところが、子どもたちは成長していくにつれ、厳しい現実に直面することになります。プロのサッカー選手になれるのは、千人に一人、いや万人に一人というずば抜けた能力と環境に恵まれた人。大半の子どもたちは成長するにつれ、自分はとてもそこまでの才能・環境に恵まれていないことに気がつきます。
私の孫もJリーグ選手になれるような才能に恵まれているとは、なかなか思えません。運動オンチの私のDNAを引き継いでいますから、いつかは現実の厳しい壁に直面する時がくるだろう、と予想しています。
そんな時に備えて、孫には「柔軟な視点と広い視野を持つこと」の大切さを伝えておいてやりたいな、と考えています。「視点」とは、分かりやすく言えば「注目している点」のこと。「視野」は「見える範囲」のことですね。
たとえば「柔軟な視点」を持つ子どもは、こんなふうに考えることができるでしょう。サッカーの世界をよく見てみれば、サッカー選手以外にこの世界を支えている多くの人たちが見えてきます。たとえば、チームの運営に携わる人、スタジアムを管理・維持する人、スポーツ用品メーカーの社員、取材・広報を行うマスコミの人、スポーツ・インストラクター‥‥。あるいは、中学や高校サッカーの指導者の姿も見えてきます。
このように、視点を変えればサッカーの世界のあちこちに、自分の能力と適性を活かせる仕事、サッカーに関われる仕事を見つけることができます。柔軟な視点を持っていれば、たくさんの選択肢が見えてくるのです。
では「広い視野」を持てば、どうなるのでしょうか。視野は見える範囲のことでしたね。サッカーの世界しか見えていない子どもが、サッカー以外のスポーツや、科学、芸術、教育、政治、経済、などのいろいろな世界が見えてきたらどうでしょうか? 多くの選択肢にあふれた豊かな世界が、はるか遠くまで広がっていることに驚くことでしょう。
「柔軟な視点」と「広い視野」の両方が備わってくると、「職業は自分の夢をかなえる手段であって、目的ではない」ということに気づく時があるかもしれません。
ところで、あなたはどんな生き方をしてみたいと考えていますか。
追記
「進路指導」の目標は学校選択や職業選択ではなくて、「生き方」を考えさせることだと言われて久しい。
「大人になったら、何になりたい?」と聞くのもよいが、発達段階に応じて「どんな生き方をしてみたい?」とか、「誰のような生き方をしてみたい?」と問いかけてみることも大切だと思う。
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