出典:映画『グリーンブック』公式サイト
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※ 本稿は、3月11日及び28日に映画『グリーンブック』を観た個人的感想です。
※ 本稿は、『グリーンブック』を既にご覧になった方を対象として記述しています。ネタバレの話題満載のため、まだ映画をご覧になっていない方はご注意ください! ネタバレを了解された方のみ、どうぞ。
目次
映画『グリーンブック』をもう一度観たいと思った理由
映画「グリーンブック」を観てきた。3月11日に既に鑑賞済みなので、2度目となる。同じ映画を劇場で2度観ることは、ほとんどない。今回は疑問点や確認しておきたいことがいくつかあったため、ウォーキングがてら映画館に出かけたという次第。
小生の疑問点と確認したかったことは、次の4点。
- 映画のエンディングの場面。一度招待を辞退したシャーリーは、どうしてトニー宅を訪問したのか?
- シャリーは同性愛者だったのか。もしそうならば、その事実をなぜ作品で描こうとしたのか?
- 南部ツアーの目的は「勇気は人の心を変えられる」とのシャーリーの信念によるものらしいが、その成果はどうだったのか?
- ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの演技を、もう一度じっくり観てみたい。
上記1~3は初見時から何となく気に掛かっていた点。もう一度見直して、いくらかでも解決の手がかりが得られたらと思ったのだ。「いい映画だったなぁ」で済ませればいいものを‥‥、損な性格である。
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疑問1:一度辞退したシャーリーが、なぜトニーの家を訪れたのか?
映画のエンディングのシーンである。8週間のコンサートツアーを終え、やっとクリスマス・イブの食卓につくことができたトニー。そこにシャーリーがワイン(シャンパン?)を抱えて不意に訪ねてくる。喜んで中へ招き入れるトニー、歓迎する妻のドロレス。ここで「素敵なお手紙ありがとう」がささやかれ、ハッピーエンドの幕が下りるという粋なシーンである。
小生が首をひねったのは、「家族に会っていけよ」と誘うトニーに「メリークリスマス」の言葉と共に去っていったシャーリーの心境の変化。一度は訪問を辞退した彼の気持ちが、なぜ変わったのかということだった。
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映画を見直して気づいたのは、翡翠の「お守り石」と「寂しい時は先手を打つんだ」というトニーの言葉がキーとなること。
トニーと別れ帰宅したシャーリー、自室で独り翡翠の「お守り石」を見つめている。緑色の翡翠の石は、2人の8週間にも及ぶ旅を見守り象徴するもの。それを懐かしそうに、寂しそうに見つめるシャーリーの表情。広く豪華であるが、共にクリスマスを祝う家族も友人もいない孤独な部屋。
ここで観客の脳裏に、前日のモーテルでの会話が想起される。長年疎遠となっているシャーリーの兄へ手紙を書くように勧めるトニー。「兄は私の住所を知っているはずだ」とにべもないシャーリー。「自分から手紙を書くんだよ」と助言した後に、「寂しい時は、先手を打つんだ」と続けるトニー。
恐らくこの言葉がシャーリーの心境の変化を促したのだろうと推測し、自分なりに疑問の一つは解決。というか、初見の時に気づけない鈍感さを反省したのであった。
疑問2:「あんたのおばさん」ってシャーリーのこと?
ツアー先のモーテル自室で洗濯にいそしむトニー、そこに地元警察から電話がかかってくる。急いでYMCAのプールに駆けつけたトニーに、警察官が「あんたのおばさん」(字幕では「おばさん」に傍点が打たれていた)が大変だよ、というたぐいの言葉をかける。
その直後に全裸のシャーリーと白人の若者が手錠で拘束されている場面。一瞬事態を理解できず困惑したのだが、「ははぁ」と納得。作品では何の説明もなされないが、恐らくシャーリーは同性愛者(またはバイセクシャル)で、白人の若者を買春したのだろう、と推測がつく。ここで、トニーが警官を「買収する」という荒技(?)を使い、窮地を脱する場面である。
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疑問なのは、なぜこのシーンを作品中に挿入したのかという理由。作品を2度観て、小生が勝手に考えたのは次のようなことである。
- 当時(1962年)の米国では、特定の性行為を犯罪とするいわゆる「ソドミー法」が施行されており、シャーリーの行為は明確な犯罪と言える。それゆえシャーリーは手錠で拘束されていたし、「警官を買収したな」という言葉も使われたのだろう。
- さらに1962年当時の南部諸州では、有色人種への人種差別的内容を含む「ジム・クロウ法」が生きていた。恐らく黒人がYMCAのプールに立ち入ることは、違法行為であったろうと推測される。
- 黒人で犯罪者であるシャーリーを解放してもらうには、警官を買収するという高いリスクを負わなければならない。下手をすればトニーも逮捕される恐れが強い。シャーリーのためにわが身を危険にさらすリスクを犯すほど、2人の関係が深まったことを示唆するシーンか。
- 白人の世界にも黒人の世界にも居場所を見つけられない孤独なシャーリー。その上に非合法なセクシャルマイノリティでもある。シャーリーの疎外感の強さ、孤独の深さを暗示するためか。
- 恥ずべき秘密をトニーに知られ、助けられたシャーリー。見方を変えれば、トニーに対し無理に「品位」を保つ必要がなくなったとも言える。ボスとしてでなく、弱点を持つ一人の人間としてトニーと接するきっかけとして、挿入したかったのかも。
YMCAプール事件については、どれが真意なのか今もって分からないのである。
※ 本稿の続きはこちら >映画『グリーンブック』をもう一度見直してみた(2)
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