あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(39) 「どうして勉強しないといけないの?」

投稿日:2020年8月22日 更新日:

老人と孫(出典:Pixabay

 えっ? 「どうして勉強しないといけないの」だって。う~ん、むずかしい質問だね。
 そういえば、君のパパも小学生の時にそんなことを尋ねていたなぁ。もう30年ちかく前の話だ‥‥。

 「ぞうさん」って歌、知ってるかい。あの「ぞうさん」って童謡を作詞した、まど・みちおさんの詩がヒントになるかもね。

 朝がくると
               まど・みちお

朝がくると とびおきて
ぼくが作ったものでもない 水道で顔をあらうと
ぼくが作ったものでもない 洋服を着て
ぼくが作ったものでもない ごはんをむしゃむしゃ食べる

それから ぼくが作ったものでもない本やノートを
ぼくが作ったものでもない
ランドセルにつめて 背中にしょって
さて ぼくが作ったものでもない靴をはくと
たったか たったか 出かけていく
ぼくが作ったものでもない道路を
ぼくが作ったものでもない学校へと

ああ なんのために

いまに おとなになったら
ぼくだって ぼくだって
何かを作ることが できるようになるために

 ある日、「ぼく」は自分の周囲にある物すべてが、どこかの誰かが作ってくれたものだと気づいたんだ。自分で作ったものなんて何ひとつない。

 たとえば「水道」についてよく考えてみると、目の前の蛇口を作った人や取り付けた人、水道管や貯水場やダムを作った人、それらの施設を動かしている人、下水の処理に関わってくれている人……。

 数え切れないほど多くの人々によって、自分の生活が支えられていることが分かったんだろうねぇ。「洋服」や「ごはん」や「本やノート」についても同じなんだ。

 君が吸っている空気、差し込んでくる太陽の光や周りの自然はどうだろう。自分が作ったものかな? 君の体や命は……? そう、我々は想像もできないほど多くの人やモノや自然に支えられ、生かされているんだね。

 では、詩の最後の3行をよく読んでごらん。

いまに おとなになったら
ぼくだって ぼくだって
何かを作ることが できるようになるために

 「ぼく」は「おとなになったら何かを作」って、どうしたいのかな? なぜ、大人にならないとダメなんだろう。
 ほら「どうして勉強しないといけないか」、答えが分かってきただろ。

 えっ? 君のパパに私が何と答えたかだって?

 じいちゃんは、小学生だった君のパパにこう言ったんだ。
 「まず自分が〇〇〇〇になるため。そして回りの人を〇〇〇〇にするため」ってね。

 ○○○○にはひらがな4文字が入るんだ。君のパパは覚えているだろうかねぇ。

海を見つめる少年

出典:Pixabay

本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(40)  あきらめてしまったノミたち   

◆本シリーズの他の記事はこちら >シリーズ「あとからくる君たちへ」関連記事へのリンク

-あとからくる君たちへ
-, ,

執筆者:


関連記事

あとからくる君たちへ(10) おもしろきこともなき世を

「おもしろき こともなき世を おもしろく」
 この言葉、高杉晋作のものとされています。長州藩に生まれた高杉晋作は、江戸時代末の倒幕運動のリーダーとして大活躍し、明治維新へ続く道を開いた人物として有名です。

あとからくる君たちへ(66) 誰があなたを守るのか_2

 今回は前回と同様に、2冊の本で紹介された被災現場のエピソードにふれてみようと思います。

あとからくる君たちへ(12) 人間を月に送る、不可能に挑戦した人々

 今年も残り1ヶ月余り、まもなく2019年が訪れます。2019年は、人類が初めて月の地を踏んだ1969年から数えて50年目に当たる年です。1961年、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディは、「米国は1960年代中に人間を月に到達させる」と宣言し、全世界を驚かせました。

レンガ積み職人

あとからくる君たちへ (2) 三人のレンガ積み職人

  「あなたは何をしているのですか?」 三人の職人に尋ねてみたら‥‥ 三人のレンガ積み職人の話、イソップ寓話の一つだとか。こんなお話です。  ある時、ある場所でのこと。三人のレンガ積み職人が …

あとからくる君たちへ(20) 元号に込められた先人の志と未来への希望

 今日は平成31年(2019年)4月30日。十数時間後に御代代(みよが)わりが行われ、5月1日午前0時より新天皇がご即位され、元号は「令和」と改められます。


管理人の “がしん” です。
2018年3月にリタイヤしました。
このサイトは、シニアライフを楽しく生きるためのあれこれと、子や孫に語り伝えておきたい「人、もの、コト」の保管庫です。

もっと詳しいことが知りたい方は、こちらをどうぞ。

【好きなこと】旅行、山歩き、映画鑑賞、読書、酒…
【好きな言葉】「着眼大局、着手小局」
【家族】妻と二人暮らし。子2人、孫3人

  • 311016総閲覧数:
  • 1862月別閲覧数:
  • 217481総訪問者数:
  • 1250月別訪問者数:
  • 2019年1月24日カウント開始日:
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930