有観客開催を行う宮城スタジアム(出典:コスミックエンジニアリング)
7月22日から25日の4連休は、2泊3日で阿蘇北外輪山を歩き、キャンプを楽しんできた。帰宅してからは、テレビのオリンピック中継から目が離せない。
山行レポートをアップすべきなのだろうが、オリンピックの「有観客」試合(制限有り)を決定した村井嘉浩(むらい・よしひろ)宮城県知事の記事を見つけたので、そちらの紹介から先にさせていただこう。
目次
村井知事が語る「有観客」決定の理由
産経新聞に「花田紀凱(かずよし)の週刊誌ウォッチング」というコラムがある。
月刊『Hanada』の花田編集長が、その週に発売される週刊誌の注目記事を紹介してくれるので、いつも楽しみにしている欄だ。
2021年7月24日は「知事にしておくには惜しい人材」というタイトルで、渦中の村井知事のインタビュー記事をとりあげていた。
当該記事は「知事選勝敗よりも”復興五輪”を有観客で」(『週刊新潮』7月29日風待月増大号)。
「花田紀凱(かずよし)の週刊誌ウォッチング(832)」(産経新聞、2021年7月24日号)
興味を引かれたので、買物のついでに『週刊新潮』を購入。
わずか2ページのインタビュー記事だが、なるほど村井知事の確固たる信念とゆるぎない覚悟が語られており、いたく敬服した次第。
東京都をはじめ競技会場のある9都道県の大部分が無観客開催を決めた中、あえて有観客を表明した理由は明確で納得のいくものだった。
”復興五輪”にこめた思いと「行政の公平性」
以下、この『週刊新潮』の記事を小生なりにまとめてみる。
宮城県が「宮城スタジアム」で男女サッカー10試合を「有観客」で開催する理由は二つあるという。
一つは「復興五輪」をうたって誘致したオリンピックであること。
「何よりも、今回のオリンピックの大命題が〝復興五輪〟であるという点です。1年延期になったことで、ちょうど東日本大震災から10年という節目の年に五輪が開催される‥‥。
‥‥五輪が成功すれば、世界に感謝のメッセージを伝えられる‥‥。」
もう一つの理由は、行政の「公平性」という点。
行政はすべての人々を平等に扱わなければならない‥‥。宮城県内ではプロ野球やJリーグの試合、その他の様々なイベントが制限こそあれ、観客を入れて行われています。
‥‥五輪の試合だけがチケットを購入しても観戦できないというのは、‥‥率直に言って不平等だと感じます。
東日本大震災から立ち直った証として、コロナ禍という逆境下でオリンピックを成功させ、世界へ感謝のメッセージを伝えたいという思い。
2011年の東日本大震災から10年間、リーダーとして県職員を引っ張り、宮城県の復興に心血を注いできた知事だからこその思いと受け止めた。
また感染拡大が懸念されるのなら、五輪競技だけでなく全てのイベントに同じ対応をとらなければ公平性が担保されないとの主張は、子どもでも分かる正論である。
この点を曖昧にしたままで、開催地首長が観客を入れないと決めたことが国民のすっきりしない気分の原因となっていたのだ。
有観客開催の方針を出した政府を厳しく批判しながら、自社主催の高校野球地方予選(有観客試合)にはだんまりを決め込む、どこぞの新聞社にはあきれるしかないが‥‥。
「最後はトップが責任を取る」
村井嘉浩 宮城県知事(出典:PHP INTERFACE)
この記事で小生が感銘を受けたのは、次の2点。
有観客開催は、科学的根拠とデータを総合的に踏まえた上での冷静な判断だという点。
たとえば、宮城県のプロ野球やJリーグの有観客試合では、これまでクラスターは起きていないこと。県内の感染状況(重症者数3人、7月17日時点)、会場となる宮城スタジアムの予防体制、仙台市内の飲食店への営業時短要請等、十分な検討と対策を行ったことが語られている。県民の安全と安心に配慮した上での決断であった。
今一つは、村井知事のぶれない姿勢と「責任は自分が取る」と明言するリーダーシップ。部下の職員には「(今秋の)知事選挙のことは気にするな、これで落ちても仕方がない」と予め伝えているとのこと。
「うちのトップは世論になびいてブレてしまうんだ」と感じたら、職員は上司を信じて仕事に邁進できない。
‥‥自分が正しいと考える道を、信念を曲げずに進むしかない。その上で最後はトップが責任を取る。
こんなトップの下で働ける職員は幸せである。
村井知事の決断力を示す例として、東日本大震災の折に地震発生16分後に自衛隊へ出動要請を行ったエピソードを耳にしたことがある。
行動力、決断力に富む村井知事、その行政手腕に対し批判的な方もいると聞く。
知事は2005年の初当選から4回連続で知事選で勝利。特に4選目の2017年には、82万5460票(宮城県政史上最多得票)を獲得したという。
宮城県民は、村井知事に広く厚い支持を寄せているようだ。