映画『砂の器』との出合い
映画「砂の器」を初めて観たのは今から30年以上前、小生が30代前半の頃だと思う。カミさんと二人で映画館に足を運んだことを覚えている。作品封切りが1974年なので、その10年後ぐらいのリバイバル上映ではなかったろうか?
全編143分という長尺だが、ラスト40分あたりで父と子の巡礼の旅が始まり、「宿命」のメロディが流れ始めるともういけない。秀夫(ひでお)役の子役が息子と重なってきて、涙腺がゆるみ始める。そのうち嗚咽が止まらなくなり、滂沱(ぼうだ)と流れる涙を隠しきれなくなってしまう。
隣のカミさんもハンカチを目に当てている。周囲のそこかしこから鼻をすする音が聞こえ、ほぼ館内総泣き状態であった。
本年6月に主人公和賀 英良(わが・えいりょう)を演じた加藤剛氏が逝去された折に、改めてビデオを観たのだが、今度は孫と子役がオーバーラップしてしまい、またも目頭が熱くなる。
これまでにビデオやBS放送等で本作品を何度観たことだろう。そのたびに「パブロフの犬」のごとく泣けてしまう。これほど涙腺がゆるんだ映画は他にはない。
『砂の器』は「日本映画不朽の名作」と絶賛され、どなたも「涙なくして見られなかった」とおっしゃる。 本作品は日本人の琴線に触れる傑作として、わが子や孫にぜひ観てもらいたい作品である。
本年(2018年)は、脚本を担当した橋本忍氏、主役を演じた加藤剛氏のお二人が逝去された年。お二人のご冥福を謹んでお祈りし、追悼の意も込めて作品を紹介したい。
「砂の器」のストーリーと概要
あまりにも有名な作品で何度も映像化されているので、多くの方がストーリーをご存じだろう。
ストーリー
東京・蒲田にある国鉄の操車場内で殺人事件が発生。しかし被害者の身許が不明で捜査は難航。迷宮入りかと思われた矢先、被害者が殺される直前に或る男と会っていたことが判明した。
ふたりの会話のなかで交わされていた「カメダ」という言葉。地名か?人の名か?
事件解明のために奔走する刑事、今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は偶然、新進気鋭の天才音楽家、和賀英良(加藤剛)と遭遇する。
そして、やがて事件は思わぬ展開を見せ始めるのだった…。(出典:ビデオ『砂の器』の内容紹介文)
原作は松本清張の同名小説。名作と称される理由をいくつか箇条書きすると‥‥。
- 原作者の松本清張氏の賞賛
「橋本さん……僕の作品で映画になったのは数多いけど、中でも一番いいのは『砂の器』これは飛び抜けてるよね」
(「生誕100年松本清張「砂の器」を旅する」、プレジデントフィフティプラス 2009年4月16日号、 プレジデントオンライン) - 豪華な俳優陣
加藤剛、加藤嘉、丹波哲郎、森田健作、緒形拳、佐分利信、渥美清、殿山泰司、笠智衆、穂積隆信、
女性陣も、島田陽子、山口果林、野村昭子、春川ますみ、夏純子、‥‥ - そうそうたる制作スタッフの顔ぶれ
監督:野村芳太郎、脚本:橋本忍、山田洋次、撮影:川又昂、音楽監督:芥川也寸志、作曲・ピアノ演奏:菅野光亮、演奏:東京交響管弦楽団 - リメイクされること5回(テレビドラマ)
ちなみに、小生はこれらのリメイク版は全く見ていない。本作を超える作品があるとは思えないからだ。
◆これは、『砂の器』シネマ・コンサートの予告映像。親子の放浪の旅と「宿命」のメロディの一部を視聴できる。
次回は、『砂の器』の魅力についてふれてみたい。
◆本シリーズの続きはこちら >映画『砂の器』(2) 「原作を超えた」見事なシナリオ
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