あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(12) 人間を月に送る、不可能に挑戦した人々

投稿日:2018年11月23日 更新日:

アポロ11号 アポロ計画

月面を歩くオルドリン宇宙飛行士。アームストロング船長撮影(出典:NASA)

“Try it.” の精神が世界を変える

 今年も残り1ヶ月余り、まもなく2019年が訪れます。2019年は、人類が初めて月の地を踏んだ1969年から数えて50年目に当たる年です。

 1961年、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディは、「米国は1960年代中に人間を月に到達させる」と宣言し、全世界を驚かせました。

 まだ半導体を使用したコンピュータどころか電卓さえも存在せず、あるのは計算尺と初歩的な真空管計算機くらい、必要な技術も、機器も情報も何もなかった時代です。この夢のような計画を本当に実現できると考えた人が、当時どれくらいいたでしょうか。

ケネディ大統領

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディ

 ところが、この大統領の宣言を受け、「アポロ計画」の名のもとに数十万人という人々が動き始めたのです。

 アメリカには “Try it.” という言葉があるそうです。これは「とにかくやってみよう」と訳される言葉ですが、困難に直面した時に、出来ない理由をあれこれと挙げるより、どうしたらできるか考え、まず一歩を踏み出すことの大切さを示唆しています。

 必要なものがなければ作ればいい、新技術も開発すればいい、ともかく一歩を踏み出してみよう、というこの前向きの精神が人々を動かしたのです。

 往復八十万キロにも及ぶ航海に乗り出す宇宙船はどのくらいの大きさが適切で、エンジンにはどの程度のパワーが必要なのか。月往復の最短コースをどのように計算するのか。これまでの宇宙服で月面を歩き回ることができるのか。それこそ無数のありとあらゆる未知の課題に対し、一人一人が、“Try it.” の精神で自分の担当するミッションに挑戦し始めました。

 ケネディ大統領の宣言から8年後の1969年7月16日、3人の宇宙飛行士を乗せたアポロ11号は、フロリダのケネディ宇宙センターからサターンV型ロケットで打ち上げられ、7月21日午前5時17分40秒(日本時間)に月面着陸に成功しました。

 午前11時56分、アームストロング船長が着陸船のハシゴをつたって月面に降り立ち、「これは一人の人間にとって小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」と述べたメッセージは、世界中に大きな感動を与えました。

アポロ11号

月面に降り立とうとする宇宙飛行士(出典:NASA)

 この様子は、月から全世界40か国に同時中継され、5億人以上の人々がテレビ画面を見守っていたと言われます。

 失敗を恐れず前に進み続ける精神と、その小さな成果の膨大な積み重ねが、わずか8年で不可能と思える夢を実現させたのです。

 この世界を変えるのは、私たち一人一人の挑戦とその成果の集積であることを示す好例と言えます。

 まもなく訪れる2019年、世界はどのように変わるのでしょう。

アポロ11号 アポロ計画

アポロ11号乗組員。左からアームストロング、コリンズ、オルドリン宇宙飛行士(出典:NASA)

 

追記 

アポロ計画

アポロ17号の宇宙飛行士が撮影した地球(出典:NASA)

 アポロ11号が月面に着陸した1969年と言えば、小生は16歳だった。アポロ宇宙船の月面着陸の様子をテレビで視聴し、信じられない現実が映像として流れているのに、驚くだけだった。

 「これは本当に現実なんだろうか?」という疑念と「凄い!」という感動がないまぜになったような、そんな心情だったと思う。

 全長110m、重さ3千トンのサターンV型ロケットを宇宙に打ち上げ、人間を月に到達させるだけでも驚愕の極みなのに、それを全世界に生中継するとは! テクノロジーの進歩の速さとアメリカの国力の強大さを痛いほど感じた記憶がある。

 アポロ計画は1972年のアポロ17号まで、事故で着陸を中止した13号をのぞき、計6回、12名の宇宙飛行士が月面を歩き、合計387kgの月の石を持ち帰ったとのこと。

 余談だが、アポロ計画でただ一機月に到達できなかったアポロ13号、その絶体絶命の危機と地球への奇跡の生還を描いた映画『アポロ13号』は、小生の大好きな作品の一つである。絶望的な状況の中、決して諦めない宇宙飛行士とNASAのチームワークの素晴らしさが描かれた秀作である。トム・ハンクスの好演が光る。

 

※こちらは、アポロ計画のドキュメンタリー映画  “In the Shadow of the Moon” の紹介動画(2分27秒)。日本語字幕はないが、当時の雰囲気がよく分かる。月面を歩く宇宙飛行士の映像も収録されている。

 

 

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