11日ぶりのブログ更新である。書きたいことは色々とあったのだが、書く時間と心理的余裕がなかったのだ。理由は、これを作成していたから。
見てお分かりのように、小生が居住する築30年超の「パール・マンション」(仮称)管理組合の臨時総会「議案書(案)」である。
我がパール・マンション(結婚30周年記念日が「真珠婚式」と呼ばれることから命名)は老朽化が進み、2回目の大規模修繕工事を実施する必要に迫られている。その工事計画と資金計画等のもろもろの案件を提案する「議案書」だ。
お屠蘇気分を味わったのは、元旦だけ。1月2日から作業に取りかかり、終日パソコンの前で入力、推敲を繰り返す。仕事始めの1月6日からは、メールか電話で外部関係者と打合せ、理事や修繕委員の方々と相談しながら修正・補足という毎日。
昨日やっと形になったのがこれである。この27ページに及ぶ議案書は、組合理事や修繕委員の過去7ヶ月間の労苦の結晶と言ってもよい。
カミさんは「どうして、そこまでやらないといけないの」とご機嫌斜めである。築30年超のマンションの大規模修繕工事費は、数千万円から億を超える。そのため、議案書には可能な限り公平、公正、客観性が求められ、分かりやすく説得力のある内容でないと納得をしてもらえない。
「古い給排水管の取替工事は賛成。でも、わが家には一歩も立ち入ってもらいたくない」、「指定された日に終日待機なんて、そんな暇があるわけないでしょ。」なんて方も、現にいらっしゃるのだ。
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国民の8人に1人が住むとされる分譲マンションの老朽化は深刻な問題である。全国の約644万戸のうち、築30年以上が約185万戸と約3割を占める。適切な修繕工事を実施せず、メンテナンスを怠ると水漏れ、ガス漏れ、外壁のひび割れ等が起こり、資産価値が下がる。資産価値が低下するとスラム化が進行。中には廃墟(?)のような建物に高齢者が点在するようなマンションもあると聞く。
これまでマンションは、近所付き合いにそれほど気を使う必要もなく、気楽に住める都市的住まいとして好まれてきた。小生がパール・マンションを購入したのもその点が大きい。しかしその利便性と気軽さが、大規模修繕や建替えには不利に働く。多様な人びとが所有しそれぞれのスタイルで生活するため、大規模修繕や建替の合意形成がむずかしくなるのだ。
パール・マンションに30年以上住み続け実感することは、多様な考えの住民の合意を得ていくためには、①日頃の近所づきあいと、②しっかりとした管理、それに③広報活動が必須ということ。マンションと言えば格好はいいが、しょせん共同住宅。「長屋」に住む心構えが必要なんだと、理事長をやってみてよく分かってきた。
マンションを長持ちさせ「終(つい)のすみ家」とするには、適切な大規模修繕を確実に実施することが必要。そのためには管理組合が頑張らねばならない。小生も頑張ろうと張り切ると、好きな山にも旅にも行けない。行けば、マンションの大規模修繕工事がますます遅れてしまう。遅れて老朽化が進行すれば、シニアライフを楽しむこともままならぬようになる。堂々巡りの思考に振り回される毎日なのだ。
最近、よく頭に浮かぶ『草枕』(夏目漱石)の冒頭部。
山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情(じょう)に棹(さお)させば流される。
意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。
とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなし人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束(つか)の間(ま)の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
最後の一文に妙に納得のこの頃である。
何はともあれ、小生と同様の悩みを抱えていらっしゃる全国の管理組合理事長さん、お互い健康にだけは気をつけてまいりましょう。
「ゆっくり、コツコツ、できることから少しずつ」ですな。