※ 本稿は、「手作りマスク 一針の思い届け」(産経新聞 2020年3月27日掲載)を、中高生用向けの講話(記事)として再構成させていただきました。
目次
「私がマスクを作ればいい」
今日は5月1日。福岡県で学校の臨時休業が始まったのは3月2日だったので、ほぼ2ヶ月もの間、休校による自宅待機が続いています。
授業なし、学校行事なし、部活がない上に、出かける場所さえない。ストレスがたまります。そんなあなたにある女子中学生のエピソードを紹介したいと思います。
出典:産経新聞
「私がマスクを作ればいい。作れるかなあ」。娘の問い掛けに、母は「作れるよ」と答えた-。新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが不足する中、手作りの612枚を山梨県に贈った甲府市の山梨大付属中1年、滝本妃(ひめ)さん(13)の善行に全国で称賛の声が上がっている。
(「手作りマスク 一針の思い届け」(産経新聞 2020年3月27日掲載記事))
滝本妃(ひめ)さんが、マスクを自分で作ろうと思い立ったのは、学校が休校になる前の2月中旬のこと。自宅から1キロほどのドラッグストアで、マスクが売り切れて途方に暮れている高齢の女性を見かけたことがきっかけでした。
帰りの車中で妃さんは、「私がマスクを持っていたら、あげたかった」と黙り込んでいましたが、しばらくして「布マスクがあるじゃん!」と思わず叫んだそうです。
「私がマスクを作ればいい。作れるかなあ」。
娘の問い掛けに、母は「作れるよ。教えるよ」と励ましたとか。
今、自分にできることを始めてみる
出典:産経新聞
妃さんは小さいころから貯めていたお年玉貯金から8万円を下ろし、母に材料を買ってきてもらいました。
作業は、ダブルガーゼと呼ばれる生地を型紙に合わせて切り、ミシンで4枚を縫い合わせ、ひもを通して作っていきます。裁縫の経験はほとんどなかったが、慣れると10分もかからずできるようになったそうです。学校が臨時休校になってからは、1日5時間作業したこともあったとか。
大人用400枚、子ども用212枚を段ボール箱2箱に詰め、3月17日に山梨県庁へ持参して贈呈。マスクは、県内の高齢者施設や児童養護施設などにさっそく届けられたとのこと。
思い立ってから約1ヶ月で600枚以上のマスクを手作りし、それを寄贈する。わずか13歳の少女が、自ら考え、「今、自分にできることをやろう」と最初の一歩を踏み出した行動力と利他の精神に心を打たれます。
その後妃さんは、さらに250枚のマスクを作り上げ、4月15日に山梨大学医学部へ寄贈しています。マスク不足で困っている医療現場の方々に着用してもらうためです。
創意工夫をする楽しさ
私が感心したのは、2ヶ月間のマスク作りの作業の過程で生まれた工夫の数々です。それらを箇条書きしてみましょう。
- 作業前にアルコールで手指を消毒し、減菌と衛生管理に努めた。
- 子ども用マスクには、スヌーピーなどの可愛い絵柄の生地を使用した。
- 山梨大学医学部に寄付したマスクには、医療現場でも使用できるよう抗ウイルスガーゼ生地を使用した。
- マスクにメッセージを添えた。
- 誰に贈りたいかを考えて寄贈先を選定した。(1回目は高齢者へ、2回目は医療現場でコロナと戦う医師や看護師へ)
どうすれば苦労して作ったマスクが有効に活用してもらえるか、自分なりに考えた末の創意工夫だったのでしょう。
最初の一歩を踏み出し、歩き続ける内に知恵が湧き、工夫が生まれ、応援してくれる人が現れてきたのだと思います。こんなアイディアが湧いてくると、ものごとは楽しくなってきます。
全ては、「今、自分にできる一歩を踏み出す」ことから始まるのです。
マスクに添えられたメッセージには、こう書かれていました。
この一枚が皆様のお役に立ったら嬉しいです!
マスクは手洗いでお願いします。
手洗い、うがいは念入りに♡
マスク作成時にはそのつど手指消毒をしてから作りました。
妃(ひめ)より
※ 手作りマスクの作り方はこちら >
※ 裁縫が苦手な人はこちら >
この人のことを思い出しました(一隅を照らす)
妃さんの行動に感じ入っていたら、この人のことを思い出しました。スーパーボランティアの尾畠春夫さん。80歳になった今も、登山に、別府湾のゴミ拾いに元気に活動中のようです。
「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」、ますますのご活躍をお祈りしています。
出典:TBS NEWS
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