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人生には「三つの幸せ」がある
人生には「三つの幸せ」がある。これはイエローハットの創業者・鍵山秀三郎さんが、熊本県の中学校で講演された時のお話です。
まず、一つは「してもらう」幸せ。赤ちゃんがお母さんからお乳を飲ませてもらう。病気で寝込んでいる時に、家族に看病してもらう。誕生日にプレゼントをいただく。人は赤ん坊の時から、何かを「してもらう」と嬉しい。
次は「できるようになる」幸せ。箸で食べられるようになる。自転車に乗れるようになる。鉄棒ができる。跳び箱を跳べる。今までできなかったことが「できるようになる」幸せがある。
三番目は「してあげる」幸せ。この三番目が一番価値が大きい。お父さんお母さんに何かをやってあげる。友達に何かしてあげる。そうするとお父さんやお母さんが喜ぶ。友達が喜ぶ。人が喜んだ姿、喜んだ顔を見たときに、自分が幸せになる。これがもっとも大事な幸せと言える。
(出典:鍵山秀三郎『あとからくる君たちへ伝えたいこと』、講演内容を筆者要約)
「自分は子供だし、お金もないので『してあげる』ことなんてできないよ」なんて思っていませんか。そんなことはありません。
たとえば「肩たたき券」をプレゼントして、お母さんの肩をたたいてあげる。履き物が散らかっていたら、ちょっと揃えておく。友だちと会ったら、笑顔で接してあげる。お金がなくても、子供でもいくらでも「してあげる」ことはできますね。
一番不幸なのは「くれない族」。「まわりが、○○してくれない」とぼやいたり、嘆いたりすることが口ぐせになっている人たちのこと。
誕生日やクリスマス、母の日のプレゼントに「おてつだい券」はどうですか? みんなが幸せになれますよ。
(平成27年12月「こもれびだより 10号」掲載記事を加除修正したもの)
追記
人生をよくする「三つの幸せ」
この[三つの幸せ」のエピソードも、よく知られた話である。『あとからくる君たちへ伝えたいこと』で鍵山秀三郎氏が述べているように、もともとは高橋佳子氏が提唱された話ということだ。
高橋氏は、「三つの幸せ」を「もらう心」「できる心」「あげる心」という言葉で説明されている(高橋佳子『運命の逆転』、三宝出版社)。
三つの幸せとは、言葉を換えれば「愛される」幸せ、「成長する」幸せ、「他者の役に立ち、感謝される」幸せとも表現できる。掲載記事には紹介できなかったが、氏は三番目の幸せについて次のように続けている。
この三番目の幸せを感じるようになると、どんどん人生はよくなっていきます。
どうしてよくなっていくかというと、この「(して)あげる」幸せのできる人の周りには、非常に善良な、「人のいい」人たちが集まってきて、そのいい人たちと人生を送ることができるようになるからです。
(出典:前掲書)
仏教の「無財の七施(ななせ)」
「肩たたき」という言葉は中高年サラリーマンをドキリとさせるが、わが子や孫から贈られる「肩たたき券」は嬉しいものだろう。
聞くところによると、肩たたき券は母の日、父の日、敬老の日で贈られる定番のプレゼントだそうだ。提唱者は誰なのか、定かではないようだ。小生は、仏教の「無財の七施(ななせ)」の精神が根底にあるのではないかと、勝手に推測している。
「無財の七施」とは、財産の無い者、教える智恵や能力のない者でもできる七つの施(ほどこ)しのこと。施しとは「恵み与えること」なので、「してあげる幸せ」と同義といってよい。具体的には次の七つの行いをさしているそうだ。
- 眼施(げんせ): やさしい眼差(まなざ)しで人に接する
- 和顔悦色施(わげんえつじきせ): にこやかな顔で接する
- 言辞施(ごんじせ): やさしい言葉で接する
- 身施(しんせ): 自分の身体でできることを奉仕する
- 心施(しんせ): 他のために心をくばる
- 床座施(しょうざせ): 席や場所を譲る
- 房舎施(ぼうじゃせ): 自分の家を提供する
(出典:「天台宗一隅を照らす運動」公式サイト)
なるほど、これならいつでも、どこでも、誰でも実践できる。金や物がなくても、周囲の人々に喜びを与えていくことで、自己を磨き、高め、安らぎと幸せの境地にいたる「行」だとか。
孫への誕生日プレゼント、手作りギフト券はどうだろう?
ところで、上の孫が来月(11月)5歳の誕生日を迎える。実は、何をプレゼントしてやろうかと思案中なのだ。「肩たたき券」にならって、ためしに次のようなギフト券はどうだろうか?
- 「お食事券」:家族みんなで食事に出かけられるギフト券
- 「スイーツ券」:食べたいスイーツ(お菓子)を買ってもらえる。
- 「ガチャ券」:1枚で1回ガチャ(ハンドルを回すとカプセル入りのおもちゃがでてくる販売機)を利用できるギフト券
- 「読み聞かせ券」:1枚につき10分間読み聞かせをしてもらえるギフト券。図書券又は本と一緒に複数枚贈ってやる。
- 「お出かけ券」:遊園地、水族館、映画、遊戯施設等、行きたい場所に家族みんなでお出かけできるギフト券。
- 「プール券」:これは確定。来年夏に流れるプールに連れて行ってあげる予約券。
ポイントは、お仕着せではなく、孫にある程度の選択権があること。何を(食べるか)、どれを選ぶか、どこに行くか、いつ使うかが選択「できる」。「してもらう」幸せに「できる」幸せが加わるので、楽しみがいや増すのではあるまいか。息子夫婦と相談せねばなるまい。
幼少期に「してもらう幸せ=愛される喜び」を心ゆくまで堪能しておいてほしい。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(10) おもしろきこともなき世を
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