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23歳にして、小3の算数ドリルを解き始めた男
……23年前のある夜のことです。仕事を終えた一人の若者が、小学3年生の算数ドリルを1ページ、1ページめくりながら問題を解き始めました。昼間は建設会社で働き、疲れ切って帰宅してからの学習です。
この若者の名は、宮本延春(みやもと・まさはる)さん。小学校の頃からひどいいじめで学校嫌いになり、勉強も大嫌いだったそうです。中学1年生の通知表はオール1。
中学を卒業する時には、漢字で書けるのは自分の名前だけ、英語の単語は”Book” だけしか知らず、九九は2の段までしか言えない極端な「落ちこぼれ」でした。
高校には進学せず、中卒で見習い大工として就職。16歳で母と18歳で父と死別し、算数ドリルに取り組み始めた23歳の頃は、全く天涯孤独の身だったとか。
一度は自分をあきらめていた宮本さんは、どうして勉強をやり直そうと考えたのでしょう? 「落ちこぼれ」が編み出した勉強法とは? 奇跡の教師「オール1先生」が、勉強法の極意と、夢を叶えるまでの道のりを紹介する自伝です。
今度の週末、この本を手にとってみませんか?
★『オール1の落ちこぼれ、教師になる』(宮本延春、角川文庫、514円)
(平成27年7月「こもれびだより 5号」掲載記事を加除修正したもの)
※ 注:文中の「23年前」は本稿発表時(2015年)における数値。2018年現在では「26年前」となる。
追記
成長するには、「憧れの人」が必要
人には、特に成長著しい若者には、「ロール・モデル(”role model”)」が必要と言われる。ロール・モデルとは、端的に言えば「お手本となる人物」のこと。あの人のようになりたいという「憧れの人」とも言える。英語の 「role(役割)+ model(手本)」という二つの単語を組み合わせたものだそうだ。
たとえば、野球少年なら大谷翔平、スケート少女なら浅田真央、将棋男子なら藤井聡太、タレント志望女子なら安室奈美恵、昔のツッパリなら矢沢永吉(かなり古いか)‥‥。
若者は自分の「憧れの人」を見つけ、その人の「まねをする」ことで大きく成長していく。ロール・モデルを設定することで自分がめざす方向性が明確となり、モデルと自分を比較することで自分の未熟さを自覚し、モデルのまねをすることで具体的な努力を継続できるからである。
勉強が不得手な子、いじめられがちな子、学校に居場所が見つけられない子にとって、宮本延春氏は良きロール・モデルであると判断し、紹介した次第。
宮本延春氏について
宮本氏のハンディと数奇な半生については、次のプロフィールを一読すれば、お分かりいただけよう。
◆プロフィール
(出典:宮本延春 Official site)
23歳で小学生の算数ドリルから再出発を決意した宮本氏の凄さは、昼間の仕事で疲れていても夜間の学習を粘り強く継続した点と、物理学への興味・関心を満たすために難関名古屋大学を志願した点にある。
ノーベル賞受賞者を6人輩出した名古屋大学。宮本氏がめざした名大理学部の学力レベルは、中学校卒業時に評定1や2ばかりの生徒が簡単に合格できる難易度ではあるまい。
宮本氏は、誰でもできる努力を誰にもできないほど継続し、高き理想をめざしたからこそ、人生を大きく変えることができたのだろう。
現在の宮本氏は、高校教諭を辞めて執筆や講演活動等に従事されていると聞く。
※ 宮本延春氏の公式サイトはこちら >宮本延春 Official site
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追記
- 本書は宮本氏の「子ども達にもぜひ読んで欲しい」との希望により、「小学校5年生以上で習う漢字には、読み仮名をつけている」とのこと。いろいろな問題で悩んだり、つまづいている小学生にも勧められると思う。(2018年11月22日)
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