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『働く君に贈る25の言葉』、社会人生活3年超の若者に薦めるこの一冊

投稿日:2019年4月23日 更新日:

はたく君に贈る25の言葉

 

 つい数日前、社会人生活4年目を迎える若者からメールが届いた。内容は、4月25日付の人事異動で本庁に配属となる(彼は地方公務員である)というもの。

 どうやら企画担当の仕事のようだ。仕事が多忙になるだろうが、忙しさを「楽しむ」ぐらいの心意気で勤務してほしい、と返信しておいた。

 併せて彼に薦めたのが『働く君に贈る25の言葉』(佐々木常夫、WAVE出版社)。2010年初版だから、発刊されて9年になる。発売されてすぐに購入し、強い感銘を受けた書である。これまで機会ある度に、「これは」と思った若者に薦めてきた本でもある。

 働くことで「自己実現」と「社会貢献」を成し遂げたいと願う若者、そんな彼らに身につけてほしい仕事の流儀や幸せに生きるための智恵が、温かみのある文章で綴られている。

 既に本書をご存じの方も多いと思うが、これも何かのきっかけ、今回はこの本を紹介させていただくとしよう。

 

過酷な人生を乗り越えたビジネスマンが説く、仕事の流儀と生きる智恵

出典:佐々木常夫オフィシャルWEBサイト

 本書の著者は佐々木常夫(ささき・つねお)氏。ベストセラー『ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない 』(2006年刊、WAVE出版)で氏のプロフィールをご存じの方も多いと思う。同書では、これほど過酷な人生があるのかと思うほどの、壮絶なビジネスマン生活が記されている。

 本書『働く君に贈る25の言葉』でもその不遇な時期は、次のように回想されている。

 私の人生にも、厳しい時期がありました。

 39歳のときに、妻が肝臓病を患い、入退院を繰り返すようになったのです。そのため私は、自閉症の長男を含む3人の子どもの世話と、妻の看病のために毎日18時には退社する必要に迫られました。その後、責任感の強い妻は、家族に負担をかけていることを気に病みうつ病を併発するに至り、四十数回に及び入退院を繰り返しました。

 私の仕事は多忙を極めていました。そのような状況のなか、家族のための時間を捻出するために、知恵を絞って業務の効率化を極限にまで高めました。しかし、会社からは何度も転勤を命じられ、東京と大阪を6度も行き来せざるを得ませんでした。

(出典:『働く君に贈る25の言葉』の「はじめに」の部分)

 この部分に続いてうつ病の妻が自殺未遂を起こし、7時間にも及ぶ手術の間に「これで俺の人生も半分終わった」、という絶望感を抱いた経験も語られている(実は妻の自殺未遂は3度目であり、「戦友」であった長女もうつに陥り自殺を図ったことが、『ビッグツリー』で明かされている)。

ビッグツリー

 「もし自分がこのような逆境に置かれたら、どうだったろうか?」と自問してみる。小生なら多分仕事をセーブし、家族のために生きようと考えていただろう。しかし、佐々木氏は家族を守ると同時に、仕事を通じて自己実現をめざす道の両方を選んだ。過酷で壮絶な「運命を引き受けた」のである。

 課長になったばかりの氏の日常を『ビッグツリー』から抜き書きしてみると、次のような日々を過ごしていたようだ。

  • 朝5時半に起床。子ども3人(中2、小6、小5)の弁当を作りながら、朝食の準備をする。
  • 7時過ぎに家を出て、8時に出社。誰もいないオフィスで仕事に集中する。
  • 18時には退社し、19時に帰宅。夕食を作り、入浴させ、宿題をやらせ、21時から自分の仕事。
  • 土曜日は妻の見舞い。できるだけ長くそばに付き添ってやる。
  • 日曜日は家事の日、洗濯、掃除、買い出し、次週の献立作成等に取り組む。

 このような生活を維持するためには、おのずと「最小の労力と時間で」「最大の効果」を挙げる仕事の流儀を作り出すしかない。自らの仕事のスキルを磨き、効率と段取りを考え抜き、組織を動かすマネジメント力を向上させること。それが家族を守り、支えることにつながることになる。

 ビジネスマンとしての佐々木氏は、20代で取引先の会社再建に携わり、その後も様々な事業改革に全力で取り組み、同期入社ではトップで課長、部長と昇格。2001年には東レの取締役に昇任し、2003年に東レ経営研究所社長に就任している。

 いわばビジネスマンとしても一流、家庭人としても不遇な家族を守り抜く「ビッグツリー」であり続けた人物と言ってよい。

 付言すると、奥様の病状は2003年より回復に向かい、現在は強い絆で結ばれた家族と幸せな生活を送っているとのこと。

 『働く君に贈る25の言葉』には、筆者のこのような実体験を踏まえた貴重で有益な仕事訓、人生訓があますところなく紹介されている。少々の授業料を積んでも、なかなか聞ける話ではない。

 

幸せに働き、幸せに生きるための25のアドバイス

 本書は、佐々木氏が今年社会人になったばかりの甥「遼君」(仮名)にあてた手紙という形をとっている。若者に直接語りかけるような文体で書かれているため、読みやすく分かりやすい。

 内容は、長く生きた小生のようなシニアにとっては、どこかで聞いたことのあるフレーズが多く、目新しい言葉や知見はそれほど多くはない。しかし人生の辛酸をなめ、風雪に耐えて経営トップに上り詰めた氏の言葉は、一つ一つが胸に響くし腹にストンと落ちる。

 小生が特に印象に残った言葉をいくつかピックアップすると、

  • 強くなければ仕事はできない。優しくなければ幸せにはなれない。
  • 欲を持ちなさい。欲が磨かれて志になる。
  • 3年でものごとが見えてくる。30歳で立つ、35歳で勝負は決まり。
  • プアなイノベーションより、優れたイミテーションを。
  • よい習慣は、才能を超える。
  • 言葉に魂を吹き込むのは、君の生き方だ。
  • せっかく失敗したんだ。生かさなきゃ損だよ。
  • 上司の強みを知って、それを生かしなさい。
  • 運命を引き受けなさい。それが、生きるということです。

 詳しくは本書を直接手に取っていただきたい。人生や仕事に悩んだり迷ったりした時に本書を開けば、新たな知見が啓け、勇気が湧いてくるだろう。特に3年間仕事でもまれた者だからこそ、うなづける警句やアドバイスを随所に発見できると思う。

 私は、若者に人生と仕事に積極的に挑んでほしい。そして本物の幸せをつかんでほしい。そのために大切なことは自分を磨くことです。そして、仕事こそ私たちを磨き上げてくれるものなのです。

(出典:『働く君に贈る25の言葉』)

 新たな職場で奮闘する、若者の前途に幸多かれと祈る。

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