※ 本シリーズ前回の記事はこちら >あとからくる君たちへ(27) ”Pay it forward.” 、「恩返し」より「恩送り」を
目次
ドーパミン、目標達成した時に出る幸せ物質
長く苦しいトレーニングを積み重ねて臨んだ大会。ライバルに競り勝って優勝しただけでなく、新記録を樹立。最高の瞬間です。思わず口をつく雄たけび、天にも昇る心地とはこのことを言うのかも。
試験に合格した時、初めてフルマラソンを完走した時、賭け事やゲームで勝った時、苦しさを乗り越えて夢をかなえた時‥‥。このような瞬間にも私たちは似たような幸福感を味わうことができます。
脳科学的に言うと、こんな時は脳から「ドーパミン」という快感物質(幸せ物質)が出ているそうです。ドーパミンは、苦しさを乗り越えて目標を達成した時に分泌され、困難を乗り越えれば乗り越えるほど、強い達成感を得ることができるとか。
すばらしい幸福感をもたらしてくれるドーパミン、実は次のような「落とし穴」があることが知られています。
- 得られたときの快感は大きいが、長続きしない。
- 快感が忘れられなくて、「もっともっと」と際限なく欲求がエスカレートしていく。
- 努力しても成果が表れない場合は、大きなストレスを感じてしまうことが多い。
- 目標達成の過程で、他人との競争が生じることがよくある。
オキシトシン、人とのふれあいが生み出す幸せ物質
脳からは、ドーパミンとは別の種類の快感物質(幸せ物質)も分泌されています。それが「オキシトシン」。
オキシトシンは、他者とふれあい、共感を感じることにより分泌されます。たとえば、赤ちゃんや子犬を抱きしめた時、友達に親切にした(された)時、家族や仲間との絆を感じた時など。
その快感は「心に灯がともるような、ほんのりと長続きする幸福感」だと言われます。ドーパミンの強烈な快感とは違い、心の安らぎや安定をもたらす幸福感です。
そのメリットは、
- 穏やかな幸福感だが、長続きする。
- ドーパミンと違って、目標を達成しなくてもよい。
- 他人と競争する必要がない。
- 幸福感が周囲に「伝染」していく。
ことだそうです。
「親切」が日々の幸せをもたらす
ドーパミンとオキシトシン、私たちが幸せを感じるためには、この二つの脳内物質が分泌されるような生き方をすればよいのです。
と分かったようなことを語ってきましたが、実はすべてある本の受け売りです。その本は、『「親切」は驚くほど体にいい!』(デイビッド・ハミルトン著、有田秀穂監訳、飛鳥新社)。
この本によると「他人の気持ちに共感し、その人のために何かをしてあげる」、これだけで心は幸せになり、体や脳にもよい変化が起きるのだそうです。
そのための最も効果的な方法が「親切」の実行。これがオキシトシンの分泌を促し、我々に幸福感を味わわせてくれるのです。
小さな親切をした時、ちょっと人に手を貸した時、優しい言葉をかけてあげた時、それだけで何か気持ちがよくなった経験はありませんか。自分にできる親切をしてあげること、これは毎日でも、誰にでもできる行動です。
ドーパミンを求める生き方も大切です。同時にオキシトシンで心を満たす日常も大切にしたいですね。このことをあなたにぜひ知ってもらいたいと考え、記事を書きました。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(29) 「情けは人のためならず」
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