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努力の天才、イチロー選手が引退
(出典:「完璧としか言いようがない、イチロー選手の引退劇」/ニューズウィーク日本版
Darren Yamashita-USA TODAY Sports/REUTERS)
3月21日、シアトル・マリナーズのイチロー外野手(以下「イチロー」と記載)が、東京ドームで行われた開幕第2戦を最後に現役引退しました。
「後悔なんてあろうはずがない」と語った引退記者会見での言葉が、その見事な野球人生を端的に表現しています。
「努力の天才」と言われたイチロー。小さな努力を継続する大切さを、次のように語っています。
夢を掴むことというのは一気には出来ません。
小さなことを積み重ねることで
いつの日か信じられないような力を
出せるようになっていきます。(出典:『イチロー 262のメッセージ』(『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会、ぴあ)
ところで、今日は「小さなことを積み重ねること」がどんなに凄いことか、電卓で計算してみることにしましょうか。
「小さなコトを積み重ねる」とどうなるか、計算してみよう
1日に1%の成長を続けると、1年後はどうなるか?
あなたの現在の能力を「1」とし、毎日1%ずつ成長していくと仮定してみます。これを365日続けると1年後にはどうなっているか、計算してみようというのです。
次のように計算していけば、答がでますね。
- 今日の能力:1
↓ 1%成長(1×1.01=1.01) - 明日(1日後)の能力:1.01
↓ 1%改善(1.01×1.01=1.020) - 明後日(2日後)の能力:1.020
↓ 1%改善(1.020×1.01=1.030) - ‥‥
※ 小数点4位を四捨五入、以下同じ
試しに10日後にはどうなっているか、電卓を叩いてみましょう。「1.01」を10回かければいいですね。電卓には「1.10462212‥‥」という数字が並びます。10日間で能力が約1.1倍になったわけです。
それでは365日後ではどうなるか。あなたが高校生なら数学の累乗(べき乗)計算だな、と察しがつくと思います。「1.01」の365乗です。あなたが小・中学生なら、次の計算専門サイトで数値を入力し、確認してみてください。
※ 「べき乗・累乗」/ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
1日1%の改善や成長を1年間続けた成果は「37.783」、37.783倍(!)に成長したということです。
では、1日0.1%の成長だとどうなるでしょう。0.1%は千分の1、きわめてわずかな値にすぎません。それでも365日後には「1.440」倍。44%の能力アップです。
逆に、1%のマイナス成長を続けると‥‥
逆に、毎日1%のマイナス成長(サボり、後退、退化)を続けていけば、どうなっていくでしょう。
- 今日の能力:1
↓ 1%退化(1×0.99=0.99) - 明日(1日後)の能力:0.99
↓ 1%退化(0.09×0.99=0.980) - 明後日(2日後)の能力:0.980
↓ 1%退化(0.980×0.99=0.970) - ‥‥
10日後の結果は、電卓で「0.99」を10回かけて出します。答は「0.904‥‥」、10日間サボり続ければ、能力は0.9倍と10%ダウン。365日後では「0.026」、信じられないような数値です。
今挙げたのはあくまで計算上の話で、実際にはこの数字のとおりにはなりません。人間の肉体や能力には生物的な限界があるし、危険な状態になれば生命維持機能が働くからです。
それでも「小さなことを積み重ねることで、いつの日か信じられないような力を出せるように」なるというイチローの言葉は、何となく実感できると思います。
まず夢中になれるものを見つけることから始まる
小さな努力を継続するには具体的な「目標」が必要、「目標」を設定するためには目ざすべき「夢」が必要になります。
イチローは、引退会見で子どもたちへのメッセージを求められると「自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つけてほしい」と即答しています。
「自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つけられれば、それに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけてほしい。
それが見つけられれば、自分の前に立ちはだかる壁に向かっていける、向かうことができると思う。
いろいろなことにトライして、自分が向くか向かないかよりも、自分が好きなものを見つけてほしい」
引退後のイチローが次にどんな夢を抱き、どんな目標に向かって努力を重ねていくのか、私にはそれがとても楽しみです。
追記
本稿のテーマである「1日1%の成長を続けるとどうなるか」は、啓発研修等でよく紹介される話題である。楽天の三木谷社長が発信源だと耳にしたことがあるが、確認はしていない。
人間の肉体や能力には限界があるので、計算結果をそのまま鵜呑みにはできない。しかし、100分の1、1000分の1の努力を積み上げていくと、とてつもない数値になる凄さは、客観的な数字だからこそ説得力を持つ。
努力という目に見えないものを、電卓を叩いて「見える」化する例として、かなり有益なネタだと思う。
もし時間の余裕があれば、今から43年前の1976年、2人の若者(スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック)がわずかな資金で創立したアップル社のエピソードを語ってやるのも効果がありそうだ。
常に挑戦を続け、成長を続けた同社は、2018年10月現在で従業員数13万人超、株価総額1兆100億ドル(約112兆円、時価)に成長している。2019年の日本の国家予算(一般会計)が101兆4564億円であることを考えても、成長を続けることの凄さがよく分かると思う。
イチローについてもっと知りたいという声が上がれば、『イチローの流儀』(小西慶三、新潮文庫)がおすすめかも。(現在、amazonでは一時的に在庫切れの状態らしい)。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(19) 何かを始めるのに、遅すぎるということはない
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