あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(22) 100円玉は円形か? ~視点を変えると見えてくるもの~

投稿日:2019年6月19日 更新日:

 手近なメモ用紙に、百円玉の絵を描いてみてください。簡単ですね。

 私は、こんな絵を描いてみました。どうですか? 

100円玉の絵

 「こんな形の百円玉なんて、ないよ!」というあなた、ちょっと考えてみてください。百円玉を水平方向から見ると、薄い長方形に見えませんか? 自動販売機のコイン投入口を思い出してみましょう。長方形の形をしていますよね。

自動販売機

 百円玉は円形でもあるし、長方形でもある。これは間違いのない事実です。しかし、私たちは「百円玉は長方形だ」と口に出して言ってみると、とても変な発言をしているような気がします。それは、百円玉の<円形の面>からのつきあいの方が、<長方形の面>から眺めるよりはずっと多いからでしょう。

 だが、それはそれだけのこと。「百円玉は円形でもあり、長方形でもある」という表現は、事実なのです。

 このように私たちの周囲には、視点を変えれば全く違った姿で見えるものはとても多いのです。私たちのものの見方や理解の仕方は、ものの本当の姿をとらえきれていないことが多い。一面的で狭くて固定的だと言ってもいいでしょう。

 普段の私たちは、いつもある視点からある光景を見ています。美しい女性を正面から見ている時は、後ろ姿は目に入りません。湖面を優雅に移動する白鳥が、実は水面下で絶え間なく足を動かしている様子も見えません。

 ある視点にどっしりあぐらをかいたまま、腕を組んで眺めているだけでは、ものの本当の姿は見えてこないのです。

 ものの本当の姿を知りたいと思っている人、言い換えれば自分の見方が一面的で有限だと承知している人は、自分の視点を動かして多様なアプローチを試みようとします。その結果「100円玉は長方形である」という認識は、奇妙に聞こえるが、決してうそではないことに気づくのです。

 視点を変えることで、新しいものの見方、新しい世界が広がった具体例を思いつくままに挙げてみましょう。

  • 「リンゴは地面に落ちる」という言い方に疑問を持ったニュートン
    「リンゴと地面は互いに引き合っているのでは」と考え、万有引力を発見した。
  • 規格外で捨てるしかなかった不良品の山
    「訳あり商品」とネーミングすることで、新しい商品ジャンルが生み出された。
  • ラー油は「調味料」であまり売れないという見方
    ラー油は具材を足せば「おかず」にもなると考え、桃屋の「食べるラー油」が生まれた。
  • トヨタ自動車は、世界トップの車のメーカーという見方
    2018年1月、トヨタ自動車の豊田章男CEO(=最高経営責任者)は「これからのTOYOTAのライバルは、Google、Apple,Facebookだ」と述べ、「脱・車メーカー」宣言を行った。

 もっと別の視点に立てば、これまでにない新しい世界が見えてくる‥‥、視点を変えるって何だか面白そうではありませんか。

子どもの笑顔

 

追記

 既にお気づきの方も多いと思うが、本稿は「コインは円形か」(佐藤信夫)のリメイク版である。数社の高校国語教科書に掲載されている「コインは円形か」を、講話用(中高生対象)にアレンジしている。

 「コインは円形か」は、コインという極めて日常的なものを題材に、人間のものの見方、認識、表現のあり方が極めて一面的で限定的であることを分かりやすく述べた名文である。

 この文章の論旨は、次の3点だろうと小生は勝手に解釈している。

〇 我々のものの見方は、もともと一面的で限定的である。

〇 だから「自分のものの見方は一面的ではないか」と、常に疑う努力をしなければならない。

〇 視点を変えるには「想像力」が必要であり、新しい認識や発想が生まれることで、新しい世界を「創造」する力が生まれてくる。

 本稿で挙げた具体例の中で、豊田章男氏の「脱・車メーカー宣言」は少し難しいかなと思ったが、あえて紹介することにした。

 「トヨタ=自動車メーカー」という固定観念から脱皮し、プラットフォーマーへの転身を目ざす、この勇気ある決断に、次世代のトヨタを創造しようという氏の意気込みを感じたからだ。

 近い将来「GAFA(ガーファ)」からトヨタを入れた「GAFAT(ガファット)」と呼ばれるようになれるか、大いに期待して見守っていきたい。

※ 参考情報
 2018年1月9日(火)~12日(金)に米国ネバダ州ラスベガスで開催された2018 International CESにおいて、豊田章男氏のプレゼンのオープニングに流された映像(約3分余り)。
 英語は全く分からないが、この動画だけでもトヨタがどんな未来を描いているのかが何となく分かる。この映像後に豊田章男CEOが登場し、「脱・車メーカー」宣言が行われたと聞く。

 余談になるが、視点が変わるとものの見方が変わる好例を見つけたので、ついでに紹介しておきたい。

 「環日本海・東アジア諸国図」なる地図をご存じだろうか。

 富山県が国土交通省国土地理院長の承認を得て作成した地図のようである。本ブログにのせるには掲載許可が必要なので、リンク先のみお示ししておく。視点が変われば、認識が変わる例としてご覧いただきたい。

※ 関係情報はこちら >「環日本海・東アジア諸国図」(富山県公式サイト)

◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(23)  幸せを求めた2人の少女

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