※ 本シリーズ前回の記事はこちら >あとからくる君たちへ(31) ”You know you’re ready.”(準備はできている)
今日は1月15日、今週末の18日(土)、19日(日)には大学入試センター試験が行われます。今年は約56万人の志願者が挑戦するとか。
このセンター試験を皮切りに、中学、高校の受験生にとって大きなプレッシャーがかかる入学試験の季節が始まります。
目次
入試の試験時間あれこれ
私たちが住む福岡県では、今年の公立高校一般入試(学力検査)は3月10日(火)に実施され、1教科50分間(英語は55分間)の試験時間で5教科の試験が行われます。
大学入試センター試験は、教科によって60分間から130分間の試験時間が設定されています。また、センター試験後に各大学が独自に行う個別学力検査(2次試験)では、試験時間150分間というものもあります。高校入試の3倍の長さですね。
たとえば九州大学の大半の理系学部では、個別学力検査(前期日程)の時間割は次のようになっています。
1 | 数学 | 150分 |
2 | 理科 | 150分 |
3 | 英語 | 120分 |
後期日程の小論文試験では、180分(3時間!)という強者(つわもの)さえ控えているのです。他の難関国立大学も似たようなものです。
※ 九州大学の入試情報はこちら >「令和2年度 入学者 学生募集要項 一般入試(一般入試 2020年度」(p.19~p.22に試験時間と配点が記載されています)
「50分の試験でさえ長いのに、150分間だって!」と驚く人が多いと思います。受験生は強い緊張感の中、学力と同時に集中力と精神的持久力をフルに発揮しなければなりません。この難関を乗り越えて合格した若者たちは、凄いと思います。
私はある時から、この厳しい入試はプロの職業人をふるいにかける「予備試験」も兼ねているのではないか、と思うようになりました。今日はその時の思い出を話すことにしましょうか。
高校の同期生A君との会話
およそ20年ほど前、高校卒業30年を機会に同窓会が開かれました。たまたま私の隣席に座ったA君。高校時代は別のクラスで親しく話したことはないが、顔は知っている程度の友人です。お互いに近況報告をしてみると、彼はさる総合病院で脳外科医をしているとのこと。
手術の執刀もやっていると聞き、好奇心の強い私はあれこれと質問をしてみたのです。
「脳の手術って大変だろう。時間はどれくらいかかるのかな。」
「まぁ、数時間っていうのが多いね。大きな手術になると、10時間という時もあるね。」
「(10時間!)その間、トイレなんてどうする?」
「トイレには、行かないな。消毒をして手術室に入っているから、トイレに行けばまた消毒し直すのが面倒だから。
それに命に関わる手術の場合は、時間との勝負だからね。手術の日は、水分や食事は控えめにしている。
心配な時は、おむつを付けることもあるよ。」
「お腹がすくだろう?」
「手術中は、空腹を感じることはないな。手術が終わって、空腹に気づくことが多いね。まぁ、こんなもんだと思えば、意外と適応できるもんだよ。」
こう語ったA君は、目を点にして言葉を失っている私にビールを注いでくれました。
脳外科医は1mmでもずれたら人命にかかわる、そんな極度の緊張感の中でメスを握っています。凄い集中力と体力が必要なんだと再認識しました。さらに自己管理の徹底さにも驚くしかありません。
私は、プロの世界の凄さに感動すら覚えました。
目標の違い、受け止め方の違いが生き方を変える
人の命を救うという高い目標と、時には10時間にも及ぶという過酷な手術を「こんなもんだ」と受け止めるタフさを備えたA君。彼と会話することで、難関大学の入学試験が、プロの職業人候補を選ぶための「予備試験」の役割も果たしているのかもしれない、という気がしてきました。
150分間の試験を頑張り抜いて合格できる若者は、学力、強い精神力、そして簡単には諦めない粘り強さを備えているはず。そしてこれらの能力を習得するために、かなり長い期間自分を鍛えてきたはずです。
見方を変えれば、めざす学校の入学試験が若者を鍛え、成長させるきっかけになっているのです。入試を、できたら避けたい高い壁ととらえるか、自分を磨き成長させてくれるための機会、と受け止めるか。
この受け止め方の違いが、あなたの生活と生き方を変えるような気がします。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(33) 学校は良い「型」を強制するところ
◆本シリーズの他の記事はこちら >シリーズ「あとからくる君たちへ」関連記事へのリンク