昨日(1月11日)は成人の日、全国で約124万人の若者たちが成人式を迎えたという。この記事は成人の日に合わせて昨日アップする予定だったのだが、1日遅れの公開となってしまった。
なぜなら公開するかどうか、ずいぶんと迷ったからだ。なぜ迷ったかは、最後に述べたい。まずは、成人を迎えたみなさんにお祝いの言葉を申し述べさせていただこう。
同じ祝辞を11年間語り続けた元杉並区長
成人の日を迎えられた皆さん、おめでとうございます。コロナ禍で迎えた成人式となりましたが、若さと希望に満ちた皆さんの前途に幸多かれと心から祈念いたします。
成人式に参加された皆さんには、各地方自治体の首長からお祝いのメッセージが伝えられたことと思います。どんな内容だったか覚えているでしょうか?
東京都杉並区長を11年間努めた山田宏氏(現参議院議員)は、毎年成人式の祝辞で同じ内容のスピーチをしてきました。そのスピーチはYouTubeにもアップされ、視聴回数は現在136万回を越えています。
山田区長の挨拶が始まると、それまで私語が聞こえていた会場はシーンと静まりかえり、若者たちの背筋が次第に伸びていくそうです。毎年、この光景が繰り返されたと聞いています。
今日はこのメッセージの一部(要約)を紹介したいと思います。
私は、若い人に大変な期待を持っています。杉並の成人式は、私が就任して11年間、一度も荒れた成人式はありません。毎年、シーンとしています。
どうしてか?私は毎年同じ挨拶をするんです。今日は、成人式。でも20年経ったら誰でも成人になるんだったら、犬でも猫でも何でも成人だ。
人間は人と成る。人と成るには条件がある。
それは、二つの感謝だ。二つの感謝の心を、特に今日は持って欲しい。一つはね、両親だよ。今の君たちを一番喜んでるのは親なんだよ。
まず帰ったら、「ありがとう」と言って欲しい。言葉に出すのが恥ずかしかったら、紙に書いてもいい。五文字だから、そっと手渡してあげて欲しい。
そうすれば親は救われる。今までの20年間の苦労が、スーッと消えてなくなる。そういうことができなきゃ、君たちは成人じゃない。大人じゃないよ。できるだろう、それくらい。二つ目、それは目に見えない人たちに感謝すること。目に見えない人、知らない人への感謝だ。一つ、遺書を読むから聞いてくれ。
靖国神社に収められている「英霊の言の葉(コトノハ)」という、戦死された方の遺書の一通です。二十歳の人です。今から二十歳の人の遺書を読むから聞いて欲しい。「お父様、お母様、ただいま出撃の命令が出ました。
今から元気に行って参ります。長い間、本当にお世話になりました。ありがとうございました。
本当は、もう一度お目にかかって、お礼を申し上げたかったけれど、今は、そのいとまがございません。心からお詫び申し上げます。
私のリュックサックには、お酒や缶詰が入っています。それらはみんな、軍から支給されたものを、いつか家に帰った時に、みんなと一緒に楽しく食べようと思って残しておいたものです。今は、そのことが出来なくなりました。
どうか、この缶詰やお酒は、皆さんで分けて食べて下さい。
自分は今から行って参ります。長い間、本当にありがとうございました。」
このね、遺書を読んでいると、毎年、何人かの成人の子たちが目頭を押さえてるんです。そして、私はこの遺書を読んだあと、毎年みんなにこう言います。
「みんな、六十数年前にも、二十歳の人がいて、こういう人生もあった。みんなはね、この人たちの分まで、立派に生きる義務があるんだよ。この人たちが生きられなかった分まで、大事に人生を生きる!みんなには、その義務があるんだ。」
だからね、今日はみんなでおいしいもの食べて、おいしいお酒を飲んで乾杯するだろ。その時には、この人たちのことを思ってね。心の中でそっと、「ありがとう」と言ってから、乾杯してほしい。
こう、毎年話すんです。会場はいつもシーンとなります。11年間ずっと。私語一つないです。みんなの背筋が伸びてます。でも、こんな話をしますとね、毎年、杉並区のある一部の人たちや、区会議員の人たちが、翌日ビラを作って、駅前で配りながら、「山田宏区長は、特攻隊を礼賛する話をした。」ってやるんです。
「ばかコケ」って言うんですよ。誰もそんな風に思っていません。
なぜか? 後で新成人の人たちから来る手紙やメールを見ると、
「そういう人たちがいたことを知りませんでした。」
「自分が20年間いい加減に生きてきたことを恥ずかしく思いました。」
「これからは、その人たちの分まで立派に生きたいと思います。」
みんな、こう書いているんですよ。みんなそうです。みんな同じ日本人なんです。みんな過去と繋がっているんです。先祖の涙も苦しみも、失敗も喜びも、みんな私たちのものなんです。
全部を背負って、「ありがとう」「ありがとう」と言って歩むことが、日本の将来を作るんです!
過去を、自分とは関係ないという顔をして、批判するだけでは日本は良くなりません。いいですか。我々が姿勢を正そうではありませんか。
(中略)
「今だけ良ければいい」「自分さえよければいい」という気持ちが、どんどん、どんどんと、私たちの国を住みにくくしています。
他人のことを自分のことのように心配し、そして背骨の通ったしっかりとした国にしていくことが、今の私たち日本国民の責任なんです。
※ 山田区長の生の声をお聞きになりたい方は、次の動画をご覧ください。
追記
なによりもまず、自分というかけがえのない存在を産み育ててくれた両親に「ありがとう」と感謝しよう。そしてそのご両親を育んでくれた国、この日本を築いてきた多くの方々にも「ありがとう」という気持ちを持つようにしよう。その時、あなたは初めて「大人」の仲間入りができるんだ。一緒に素晴らしい日本をつくっていこうじゃないか。
山田区長は、このようなメッセージを若者たちに11年間語り続けてきた。動画を拝見すると、「この人は本気で話しているな」という真剣さと熱が伝わってくる。この祝辞を聞くことができた杉並区の若者たちは幸せだな、と思った。
さて、この記事の公開をためらった理由だが、もうお分かりの方も多いだろう。「靖国神社」、「(英霊の)遺書」、「出撃」などと言う言葉に触れると、眉間にしわを寄せる方々がいらっしゃるからである。
小生は、右翼でも軍国主義者でもない。きわめて普通の考え方を持った一般人だと考えている。しかしながら、山田元区長のメッセージを紹介することで、周囲の方々やブログ読者との関係が微妙に変化するだろうな、という予感も抱いている。
「社交の場では政治と宗教の話はタブー」というのが、コミュニケーションの原則だとか。小生もこれまでの人生で、この手の話は極力避けてきた。静かな池にあえて一石を投じる必要もあるまい、というのがその理由。だから、記事公開もためらったのである。
迷った末に公開に踏み切った理由は二つある。
一つは、自分の孫たちには山田氏のスピーチをぜひ聞いてほしいと思っていること。このブログは、『シニアライフを楽しく生きるためのあれこれと、子や孫に語り伝えておきたい「人、もの、コト」の保管庫』だからだ。
掲載基準は「可愛い孫に伝えたいかどうか」が大原則。この記事を読んでどのように受け止めるかは、孫たちの自由である。
二つ目の理由は、1通の年賀状の返信を受け取ったから。文面は次のようなものだった。
「年賀状ありがとうございました。夫はすい臓ガンで昨年二月に亡くなりました。」
現役時代、ずいぶんとお世話になった上司だった。享年69歳。つい先日68歳の誕生日を迎えた小生は、しばらく言葉が出なかった。
余命が限られた老人には「後悔などしている暇はない」。残された時間、他人の評価を気にして言いたいこと、やりたいことを遠慮するのはもう止めよう、と改めて思ったからだ。
「今だけ」「自分だけ」という卑しい心根を持っていないか。両親と先人たちから受けた恩恵に感謝し、次世代のために今自分のできることを積み上げているか。人としてふさわしい生き方をしているか。
成人の日は、大人が我が心に問い直してみる日でもある。
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