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映画『風の電話』(2) ~鎮魂と再生に至る旅~

投稿日:2021年2月19日 更新日:

映画『風の電話』ポスター出典:『風の電話』公式サイト

◆前回の記事はこちら >映画『風の電話』(1) ~なぜ、自分だけが生き残ったのか?~

 前回は映画『風の電話』を初めて視聴した時に感じた「違和感」について述べてみた。
 その数ヶ月後に「NHKスペシャル 風の電話~残された人々の声」という動画を視聴し、思うところあってもう一度『風の電話』を見たいと考えるようになった。

 今回は、本作を改めて鑑賞した感想である。

※ 本記事はネタバレの話題満載のため、まだ映画をご覧になっていない方はご注意を! ネタバレを了解された方のみ、ご覧ください。

「悲しみは、悲しみを知る悲しみに救われる」

 今回は映画の流れに身を委ね、ハルと一緒に旅をするつもりで鑑賞してみようと思い、ビデオのスイッチを入れた。

映画『風の電話』出典:『風の電話』公式サイト 

 叔母の広子が病気で倒れた後、大切な人を失う恐怖に襲われたハル。広島豪雨災害(2014年)の被災跡地で、憔悴しきっているところを公平(三浦友和)に助けられる。

 妻子に逃げ出され、認知症の母を抱えて暮らす公平。自殺した妹と同じ目をしたハルに「生きてんだから食わなきゃ」と食事をふるまい、別れ際に「死ぬなよ」と念を押す。

 ふるさと大槌町(岩手県)をめざすヒッチハイクの旅を始めたハル。様々な人と出会い、別れ、共に旅をしていく。彼らはいずれもハルと同様、心に傷をかかえながら生きている人々だった。

 彼らは心の痛みを知るからこそ、ハルの痛みを受け止め、寄り添い、励まそうとする。
 「死ぬなよ」、「また会いにきてね」、「金を返しにこいよ」、「大丈夫」。別れ際の一言やハグが、ハルの心をやわらげ温めていく。

 ハルは彼らとの交流を通じ、苦しんで生きているのは自分だけではないこと、苦しくてもなぜ生きていくのかを徐々に感じ取っていく。

映画『風の電話』出典:『風の電話』公式サイト

 実在の風の電話を自宅の庭に設置し、大切な人を亡くした方々を支援してきた佐々木格(ささき・いたる)氏。氏の著書『風の電話ー大震災から6年、風の電話を通して見えることー』の次の言葉が思い出された。

悲しみは、悲しみを知る悲しみに救われ、涙は、涙に注がれる涙に助けられる

(金子大榮『歎異抄・領解』)

 2度目の視聴で印象的だったのは、ハルの変化。出会いと別れを繰り返すうちに、無表情な顔にかすかな微笑が生まれ、高校生らしい笑顔が浮かぶようになり、他者への心配りがかいま見えるようになる。

 凍り付いたハルの心が少しずつゆっくりとだが温められ、癒やされ、それが表情やしぐさに表れる映像は心地よいものだった。

 

家族への鎮魂と再生のメッセージ

映画『風の電話』出典:『風の電話』公式サイト

 映画『風の電話』のハイライトは、ハルが風の電話を手に取り、亡き両親と弟に思いを伝えるラストシーンである。

 ここでは、大切な人への鎮魂の祈りと共に、絶望から再生へ踏み出そうとする一筋の希望が語られる。 

 驚いたのは、この10分以上にも及び長回しシーンの台本がなかったという点。全てモトーラ世里奈の即興の演技だとか。諏訪監督はこのシーンのセリフは、すべてを彼女に委ねたと語っている。

 モトーラ世里奈も、ハルの心になりきるため、本番前に電話ボックスに入らないと決めていたとか。

 ハルになりきり、自分の内から自然に紡ぎ出される言葉で家族に語りかけている。圧巻の演技だ。このシーンはぜひご自分で味わっていただきたい。

風の電話

実際の風の電話の内部(出典:    )

 『風の電話』は東日本大震災の遺族の悲しみを描いた作品というだけではない。生きることの不条理に「なぜ」と自問する時、それでも生きねばならない苦しさに直面した時に思い出してほしい、そんな映画である。

※ 東日本大震災に関係する過去記事

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