出雲見聞録(4) 掛け軸の品定めに古美術店へ

投稿日:2021年4月2日 更新日:

髙美堂に展示された掛け軸

「高美堂」で展示されていた掛け軸

 出雲大社に参拝したら、ランチは割子(わりご)そばと決まっている。午後は出雲市内の掛け軸専門店「高美堂」を訪れ、軸の品定めとしゃれ込む。

◆前回の記事はこちら >出雲見聞録(3) 古代高層神殿に思いを馳せ、映画『RAILWAYS』の車両に再会

※ 本稿は2021年3月10日の記録を、4月2日にアップしたものです。 

目次

ランチは出雲の割子そば

荒木屋 出雲そば

出典:出雲観光協会公式ホームページ

 出雲大社に詣でた時は、やはりランチは割子そばを食べたい。いつも訪れるのは、大社から徒歩10分ほどの「荒木屋」。

 創業は天明年間(1781年~1789年)。江戸時代後期から200年以上続く、出雲そば屋として日本最古の老舗だそうだ。店内は民芸調の落ち着いた雰囲気で、そばも小生らの好みの味。

 荒木屋のそばを楽しみにしていたのだが、あいにく店休日(水曜日)。仕方がないので、少し先の「かねや」に入る。

かねや 出雲そば

 この店も評判の店のようで、店内に有名人の色紙が所狭しと貼られている。仲代達也、北大路欽也、黒柳徹子といった大御所から若手芸能人、中には陸上の瀬古利彦、男子マラソン日本記録保持者の大迫傑の色紙もある。そういえば出雲は「全日本大学選抜駅伝」の開催地だったなぁ。

かねやの三色割子4段そば

注文した三色割子4段そば。

 運ばれたそばは少し固めだったが、なかなかの味だった。最後にそば湯をいただき完食。割子5段頼んでもよかったかな。

 食後は駐車場までもどり、車内で30分ほどの仮眠。窓を3分の1ほど開け、シートを後に倒して熟睡。

 

掛け軸の楽しみ

 午後は出雲市内の掛け軸専門店「高美堂」を訪れ、軸の品定めである。この店を訪れるのを、カミさんが楽しみにしていたのだ。

 小生夫婦と掛け軸とのなれそめについては、以前本ブログで「掛け軸を収納する桐箱を作ってみた」という記事の後半部分で紹介したことがある。その部分をここに再掲させていただこう。


 ‥‥掛け軸だが、季節の移り変わりとともに掛けかえるのが楽しみになっている。

 掛け軸に興味を持ったのは、60歳の晩秋の頃である。旅先の松江市でとある古美術店をふらりとのぞくと、駒鳥と梅花が描かれた1本の軸を見つけた。これをカミさんがえらく気に入り、購入したのがきっかけである。以後、旅に出る度に訪問地の古美術店や骨董屋に立ち寄り、気に入ったものを1本2本と買い足してきた。

 マンション住まいのため、わが家の床の間は幅1間ほどの小さなものだが、それでも軸を掛け替えると部屋の雰囲気ががらりと変わる。季節や行事、気分に応じて軸を掛け替えると、なかなか楽しい。新年が近づくと慶賀用の松と鶴の軸、立春の頃には梅花を描いた軸、晩秋には古寺と紅葉をあしらった軸‥‥と、折々の楽しみになってきた。

広瀬淡窓の掛け軸

 これは、数日前までかけていた広瀬淡窓の漢詩「桂林荘雑詠諸生に示す」の軸(飛騨高山で購入)。立派とは言えない紙の表装で安価な軸だったが、詩が気に入って購入した。私塾「桂林荘」で勉学に励む若者たちの友情が詠まれている。

 淡窓の漢詩に変えて新しく掛けたのは、春ののどかな自然を描いた(と勝手に感じている)山水画。春にふさわしい淡い色彩が気に入っている。年末に京都東寺の「弘法市」で購入したもの。

山水画の掛け軸
 生活の洋風化に伴って床の間を設けない和室が増え、掛け軸の売れ行きは長く低迷しているようだ。年代物の軸もかなり値引きされているようで、年金生活者にとっては有り難いが、少し寂しい気もする。

 そういえば、奈良の古美術店で熱心に掛け軸を物色している欧米人の姿が目についた。「クールジャパン」の一環で、掛け軸の良さが欧米で再評価されるかもしれないなぁ。

 

「高美堂」で掛け軸を品定め

高美堂

 カミさん曰く、「自分が知っている限り、ネット上で最も分かりやすい掛け軸販売サイト」とのこと。旅から帰って、小生も覗いてみたが、なるほど実に丁寧に個々の作品を紹介している。お値段も1万円台からとリーズナブルな価格帯の品も多い。

 2階に案内されると、すごい数の掛け軸が整然と整理され、棚に並んでいる。壮観の一言だ。聞けば、常時1200幅ほどの軸を取り揃えているとか。

高美堂

出典:高美堂サイト

 掛け軸には整理番号が打たれ、各作品の特徴を入力したデータベースで管理されている。カミさんが希望する軸の番号を伝えると、パソコンで検索され、すぐに棚から取り出して眼前に広げてもらえる。

 広げられた掛け軸を中心に品定めをしていく。実際の床の間で軸を比べられるのが有り難い。あれこれ見せていただいた結果、「紅椿」と題されたこの軸を購入。値引きもしていただき、厳冬期(1月~2月)に床の間を飾る軸が増えた。

紅椿の掛け軸

「紅椿」の軸。表装は仕立て直されている。

 ご主人とお茶を飲みながら、掛け軸談義をするのも楽しみの一つ。聞けば、松江や京都のオークションで古い軸を競り落とし、必要なものは修復(染み抜き、汚れ落とし、表装の仕立て直し)し、ネットで販売するというビジネススタイルのようだ。全国から注文の連絡が入ってくるという。

 「出雲大社にお参りにくる楽しみが一つ増えたなぁ」と、カミさんと言葉を交わす。

 親切なご主人に別れを告げ、後は松江までの約35kmをドライブ。左手に広がる宍道湖の穏やかな湖面を眺めながら、国道9号線をのんびり走る。16時前に宿に到着。今晩は布団で寝られるわい。

サンラポーむらくも

松江の宿「サンラポーむらくも」

 宿で一休みし、宍道湖に沈む夕陽を見に行こうかと思ったが、外は冷え込んできた模様。年寄りはあまり欲張らないほうがよい。
 観光サイトにアップされた画像で、美しい落陽をお楽しみいただこう。

宍道湖に沈む夕陽

宍道湖に沈む夕陽(出典:松江観光協会

 


※ 本記事の続きはこちら >出雲見聞録(5) 松江城周辺を気ままに歩く


※ これまでの「旅」関連記事はこちら 

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