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「お父さん、日本のことを教えて!」
ヤマト・ユダヤ友好協会会長の赤塚高仁(あかつか・こうじ)さんの心にスイッチが入ったのは、一人娘の「マホ」さん(当時高校1年生)の訴えを聞いた時でした。
1年間の米国留学から帰国したマホさんは、父親である赤塚さんに「お父さん、日本のことを教えて!」と懇願(=熱心に頼むこと)したのです。
「私、ほんとに恥ずかしかった。つらかった。だってみんなから聞かれるんだもん、『日本の国って、いつ、誰がつくったの?』って。私が『分からない』と答えると、みんなとても驚いてた」
質問してきたアメリカの同級生たちは、全員、「自分の国がいつ誰によってつくられたか」を知っていました。だから驚いたのです。ホストファミリーのお母さんからも言われたそうです。「あなたが知らないのは、日本への愛がないからじゃないかしら。自分の国を知ることは、愛することの第一歩。自分の国を愛せないで、どうして他の国を愛することができるの。」
(『お父さん、日本のことを教えて!』(赤塚高仁、自由国民社)の記述を要約)
今と違ってネットなどない時代です。日本国の成立について調べることもできないマホさんは、うつうつとして1年を過ごしました。そして日本に戻るやいなや、涙ながらに「お父さん、日本のことを教えて! 何も答えられなくて、ほんとうに悲しかった」と訴えたのです。
赤塚さんは困りました。実は自分も日本がいつどうやって建国されたのかよく知らなかったからです。
娘さんの求めに答えたい、同時に自分も日本について学び直すことにしようと考え、赤塚さんの猛勉強が始まりました。
アメリカの中学校の教科書に書かれた日本建国の神話
ところで中高生(と勝手に決めています)のあなたは、この「日本の国はいつ、誰がつくったのか」という問いに答えられますか?
恐らくほとんどの生徒が答えられないでしょう。実は私もそうでした(笑)。その理由は後で話すとして、赤塚さんの話題にもどりましょう。
日本の歴史や文化を学び直すことにした赤塚さんが、たいへん驚いたことがあります。それは、アメリカのある中学一年生用教科書に、日本の建国神話が紹介されていたからです。
イザナギという権威ある神が、その妻イザナミと共に「天の浮橋」の上に立った。
イザナギは、眼下に横たわる海面を見下ろした。
やがて彼は暗い海の中に、宝石をちりばめた槍を降ろした。
その槍を引き戻すと、槍の先から汐のしずくが落ちた。
しずくが落ちると、次々に固まって、島となった。
このようにして日本誕生の伝説が生まれた。またこの伝説によると、イザナギは多くの神々を生んだ。
その中の一人に太陽の女神があった。
女神は孫のニニギノミコトを地上に降り立たせ、新しい国土を統治することを命じた。
ニニギノミコトは大きな勾玉(まがたま)と、神聖な剣と、青銅の鏡の3つを持って、九州に来た。
これらはすべて、彼の祖母から贈られたものであった。
これら3つの品物は、今日もなお、天皇の地位の象徴となっている。ニニギノミコトにはジンムという曾孫があって、この曾孫が日本の初代の統治者となった。
それは、キリスト紀元前660年の2月11日のことであった。何百年もの間、日本人はこの神話を語り継いできた。
この神話は、日本人もその統治者も、国土も、神々の御心によって作られたということの証明に使われた。現在のヒロヒト天皇は、ジンム天皇の直系で、第124代にあたるといわれる。
かくして日本の王朝は、世界で最も古い王朝ということになる。(出典:『お父さん、日本のことを教えて!』)
国土の成立を示す「国生み神話」と、ニニギノミコトが太陽の女神に命じられ、神々の住む高天原から地上(日本列島)に降り立つ「天孫降臨(てんそんこうりん)」の話です。
赤塚さんが驚いたのは、この教科書が日本で最も古い歴史書である『古事記』と『日本書紀』をきちんと踏まえて書かれていることでした。
「太陽の女神」とは天照大御神(あまてらすおおみかみ)、「ジンム」とは初代神武天皇。「九州」というのは、宮崎県の高千穂の峰。そして「ヒロヒト」とは裕仁天皇(昭和天皇)のことです。
つまり、日本という国は紀元前660年2月11日に、神武天皇が(奈良の橿原(かしはら)で初代天皇として即位し、建国を宣言した時に生まれたと明確に記されているのです。2月11日が「建国記念の日」と定められた由来です。
残念ながら、日本の義務教育の教科書でこのことにふれたものは一つもありませんでした。
神話はファンタジー(空想)なのか?
ニニギノミコトが太陽の女神であるアマテラスの命を受け、天上世界から地上に降り立っただなんて現実にあるはずはありません。これを「ファンタジーだ、おとぎ話だよ」と言って笑い飛ばすのは、簡単です。
でもよく考えてみると、世界には同様の超現実的で空想のような神話がたくさんあることに気づきませんか。
旧約聖書には神が泥をこねて人間を作り、蛇がイブをそそのかして禁断のリンゴを食べさせたとあります。ギリシャの神ゼウスは「稲妻を投げて」敵を倒し、北欧の神話では神々と巨人達が最終戦争を行うと伝えられています。
これらの神話を事実と思っている人はまずいないでしょう。しかし日本以外の多くの国では、神話は現代まで大切に受け継がれています。そこには深い意味と民族の思いが込められている、と考えられているからです。
では「天孫降臨」の神話には、どのような意味と祖先の思いが込められているのでしょうか? それについては、次回お話しすることにしましょう。
※ 本稿は、次の資料をもとに書きました。
『お父さん、日本のことを教えて!』(赤塚高仁、自由国民社)
『「宇宙開発の父」が教えてくれた日本の神話の大切さ』(赤塚高仁、『日本講演新聞』2022年1月10日 2913号)
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(53) 『お父さん、日本のことを教えて!』_2 ~「天孫降臨」神話に込められた意味~
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