あとからくる君たちへ

あとからくる君たちへ(53) 『お父さん、日本のことを教えて!』_2 ~「天孫降臨」神話に込められた意味~

投稿日:2022年1月22日 更新日:

『お父さん! 日本のことを教えて!』の著者、赤塚高仁さん
(出典:赤塚高仁ーYouTube

 前回は、赤塚高仁さんが日本の歴史や文化を学び始めるきっかけとなったエピソードを紹介しました。

 今回は、古事記の中の「天孫降臨(てんそんこうりん)」神話を例に挙げ、その意味するところを一緒に考えてみましょう。

※ 前回の記事はこちら >あとからくる君たちへ(52) 『お父さん、日本のことを教えて!』_1 ~アメリカの中学教科書に書かれていた日本建国神話~

「天孫降臨」神話に込められた意味

 次の絵はアマテラス(天照大御神)が、これから地上に降り立とうとするニニギノミコトに「三種の神器(鏡、勾玉、剣で、天皇の象徴とされる3つの宝物)」と共に稲穂を授けている場面です。

ニニギノミコトに稲穂を授ける天照大御神(「斎庭の稲穂」今野可啓画・部分)

 『お父さん、日本のことを教えて!』では、この「天孫降臨」のエピソードは、次のように説明されています。

 天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に三種の神器と稲穂を渡して、地上を統治するよう告げました。そのときに、3つの大切なこと(「三大神勅(さんだいしんちょく)」といいます)を命じました。かんたんにいうと、次のような内容です。

 1 この国の君主である自覚を持ちなさい。
 2 三種の神器を大切にしなさい。
 3 稲穂を育てて地上を治めなさい。民を飢えさせてはいけない。

(出典:『お父さん、日本のことを教えて!』)

 さて、ニニギノミコトはこの神勅(=神の言葉)をどのように受け止めたと思いますか。私は次のように勝手に解釈しています。

 1 私は国を立派に治めるために、自分を磨き、徳を養うように努めます。
 2 私は神の言葉を忘れないために、三種の神器を大切にし、子々孫々まで伝えていきます。
 3 私はこの稲を地上に広め、国民の命を守っていきます。

 「徳によって治め、神の言葉を末永くつなぎ、国民の命を守る」こと、それが地上を治めるニニギノミコトの使命であり、その子孫(ニニギノミコトのひ孫が初代神武天皇)である歴代天皇の一番の願いになったと。

 ちなみに三種の神器は、令和元年5月1日に現在の天皇陛下(第126代)に引き継がれています。

 

祈りと大御心(おおみこころ)

引き継がれる祈り

2015年4月、ペリリュー島で戦没者に祈りを捧げる天皇・皇后両陛下(当時)

 「国民の命を守る」と言っても、人間にできることは限られています。たとえば地震や洪水などの天災、日照りや冷夏などの天候、さらにコロナウィルスのような伝染病などは人間の力ではどうにもできません。天皇に超能力が備わっているわけではないのです。天皇にできることは、「祈る」ことです。

 たとえば毎年1月1日の午前5時30分、天皇陛下は「四方拝」という祈りを捧げられます。まだ夜も明けやらぬ皇居の庭に出られ、「もし、今年災い事や不幸なことが国民に来るのであれば、(国民が災いを受ける前に)自分を通っていくように」との祈りを捧げられます。

 日本国民1億2千万人に降りかかる不幸を、まず我が身で引き受けようとの尊い祈り。この崇高な祈りが千年以上も続いているところに日本と皇室のすばらしさがあると、ひしひしと感じます。

 余り報道されていませんが、国と国民の幸せを願う陛下の祈りは、元旦の四方拝だけでなくほぼ一年中行われています。「天孫降臨」神話のアマテラスの願いは、永い永い時を経て現在も引き継がれているのです。

※ 「四方拝」については、2019年12月に関連記事をアップしています。興味のある方はのぞいてみてください。(四方拝の記事はこちら 

大御宝(おおみたから)と大御心(おおみこころ)

 ところで皆さんは「大御宝(おおみたから)」という言葉を知っていますか。辞書を引くと「天皇治下の国民。人民。一説に農民のこと」とあります。実は天皇家では、われわれ国民のことを「大御宝(おおみたから)」と表現することが多いのです。

 「子宝(こだから)」という言葉から分かるように、民は大きな「御宝」のように大切なものという意味です。もともとは「百姓」と書いて「おおみたから」と読んでいたようです。

高津神社絵馬殿に掲げられた仁徳天皇想像図

 この言葉で有名なのが第16代仁徳(にんとく)天皇の「民のかまど」の神話。『日本書紀』によると、仁徳天皇は皇后に次のように語ったと記されているそうです(日本書紀は漢語なので、私には読めません)。

天が君(=天皇)を立てるのは、百姓(おおみたから)のためである。だから、君は百姓をもって本(もと)とする。
かつての聖王は、一人でも飢えたなら、自らを顧みて責めたという。
いま百姓が貧しければ、朕(ちん、=私)も貧しい。
百姓が富めば、朕も富む。百姓が富み君が貧しいということは、未だない。

(竹田恒泰著、『現代語 古事記』)

 この言葉からも、天皇にとって最も大切なのは「民」であることがよく分かります。仁徳天皇は「聖帝(ひじりのみかど)」と呼ばれ、その治世は歴代天皇が模範とされた方です。

 一方国民は、このように民を大切に思われる天皇の心を「大御心(おおみこころ)」と呼び、敬愛してきました。
 「大御宝」と「大御心」。この天皇と国民のきずながあったからこそ、日本国は2600年以上も続くことができたのだと思います。まさに世界史の奇蹟です。

3人の天皇陛下

 私がその言動を存じ上げている天皇陛下は3人(昭和天皇、上皇陛下、今上陛下)。国民と共にあり、国民の幸せを祈るお姿の一端を紹介させていただきましょう。

◆1947年、原爆で廃墟と化した広島を激励に訪れた昭和天皇。市民7万人の「天皇陛下万歳!」の声が鳴りやまなかったと言われます。

出典不明

※ 動画のURLはこちら >https://youtu.be/3iYTW3iTces

◆2011年4月、東日本大震災の被災地・宮城県で、膝を折り被災者を慰問なさる天皇陛下(当時)

出典:©JMPA

◆2020年9月。五穀豊穣(ごこくほうじょう)を神々に感謝する「新嘗祭(にいなめさい)」に備え、自ら育てた新米を収穫される今上陛下

出典:朝日新聞 

 神話は決してファンタジー(空想)ではなく、深い意味と民族の思いが込められていること、分かってもらえたでしょうか。

 おや、もう予定の文字数を越えてしまいました。次回は、『お父さん、日本のことを教えて!』を皆さんに勧める理由を話すことにしましょう。
 では、また。

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