山友のS氏。毎年11月に奥方と一緒に境港へ出かけるのが恒例行事である。聞けば、ゆっくりと温泉に浸かり、市場で格安で購入したカニをホテルで堪能していると言う。
境港再訪の機会があれば、小生も同じ手でカニを満喫したいと、かねてから考えていた。
◆前回の記事はこちら >出雲見聞録(5) 松江城周辺を気ままに歩く
※ 本稿は2021年3月11日の記録を、4月20日にアップしたものです。
ドライブを楽しみながら境港へ向かう
松江から境港までは国道431号で40分ほどの距離である。しばらく走ると右手に「中海」が広がり、陽光にきらめく湖面を眺めながらの快適なドライブとなる。
途中、道の駅「本庄」に立ち寄る。ここに車を止め、中海に面した展望所から望む大山が好きなのだ。
あいにくこの日はぼんやり霞んでいたが、湖面の向こうに堂々とそびえる巨大な山体は、やはり圧巻。山頂に雪をいただき、峻厳なたたずまいを崩さない。
左に目をやると、境港の新名所「江島大橋」が目に入る。
5千トン級の船が下を通れるよう、橋の最上部は高さ約45メートルにも達するという。車のCMで「ベタ踏み坂」と呼ばれていた、例の橋である。
江島大橋(出典:ニッポン旅マガジン)
13時20分、魚市場に隣接する水産物直売センターに到着。
16時までの営業なので、まだ鮮魚はあるだろうと思ったのが甘かった。コロナ禍の平日午後ということもあり、買い物客はまばら。威勢のいいかけ声がうつろに響くようなありさまだ。
センター内に12ある鮮魚店のうち、小生がいつも訪れる店は「丸八商店(カニ専門店)」と「大海(鮮魚も取扱い)」。大海は売り切れらしく、早々と閉店していた。
丸八商店はまだ営業中とあって、さっそくボイルされたズワイカニを品定め。とは言っても、小生にカニの目利きなどできはしない。
元気のいいお姉さんとやり取りしながら、勧められるカニを購入し、宿ですぐ食べられるようハサミを入れてもらう。
S氏より「B級カニ(足が1、2本取れたもの等)が狙い目」と知恵づけされていたので、それも購入。
隣のサラリーマン風の若者は、カニ足一山1,000円を4袋も買っていた。東京に宅急便で送り、友人と食べるそうだ。
「刺身はないか」と他店をのぞくと、新鮮なヤリイカが目につく。聞けば一本釣りだという。
「今晩宿で食べるので、さばいてもらえないか」と交渉。他に客がいないこともあり、OKの返事。3杯購入。狙いをつけていたスズキのサクは、既に売り切れていた。
今朝水揚げされたばかりの体長20cm以上のイワシが1尾35円! 高級魚ノドグロが1尾600円! 新鮮なサバもタコも実に安いので、魚好きの小生はテンションが上がってくる。
イワシを20尾、穴子を2尾、自宅で食べるB級カニ3杯3,000円も勢いで購入し、翌朝まで冷蔵庫に保管しておいてもらう。
「水木しげるロード」を一回り
持参したクーラーボックスに晩酌用のカニとイカ刺し等を入れ、JR境港駅へ向かう。
境港は「さかなと鬼太郎のまち」だそうだ。水木しげるの生誕地ということで、妖怪で町おこしに取り組み、それなりの成功をおさめている。
空港の名は「米子鬼太郎空港」、駅前通りは「水木しげるロード」、郵便局は「水木ロード郵便局」、ここまでしなくてもと思うのは、小生の歳のせいだろうか。
『週刊少年マガジン』でねずみ男を初めて知った時は、少なからず驚いた。
これほど金に弱く、平気で嘘をつき、欲望に溺れるといとも簡単に人を裏切るキャラクターは、それまでの少年漫画の世界にはいなかったからだ。
しかし、どこか憎めない魅力もないことはない。当時中学生だった小生、この不思議な半妖怪(ねずみ男は人間と妖怪のハーフだとか)に強い印象を受けた記憶がある。
「猫娘(ねこむすめ)」の像も発見。ねずみ男の天敵で、小生は大好きなのだが、この姿はあんまりだろう。
猫娘はこうでなくては。
水木しげるロードを散策し終え、ホテルにチェックイン。その夜は、黒糖焼酎のお湯割りでカニとイカ刺し尽くしの夕餉(?)。日本海の幸をたっぷりと味わうことができた。
翌朝、朝食を終え部屋にもどると室内がカニ臭いことに気づき、いささか恥ずかしい思いであった。
3月12日以降は雨天という予報だったので、カミさんと相談し帰宅することにする。天候と気分次第でどうとでもなるのが、シニアの旅の有り難いところ。
水産物直売センターで保冷してもらっていたカニ等を受け取り、往路と同じ道をのんびり走って帰る。
途中の温泉で一風呂浴びて昼食、18時過ぎには無事帰宅。おかげさまで楽しい旅をすることができた。
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