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足し算の「4」と掛け算の「4」、違いは?
10年ほど前に無着成恭(むちゃく・せいきょう)さんというお坊さんが面白い話をしていました。
無着さんは僧侶になる前は、中学校の国語の先生。また「全国子ども電話相談室」(TBSラジオ)というラジオ番組で、28年間レギュラー回答者として活躍されていた方です。
無着さんの話は、こんな内容でした。
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いきなり問題です。
「2+2」は「4」で、「2×2」も「4」ですが、この足し算の答「4」と掛け算の答「4」は、同じ「4」でしょうか。それとも違う「4」でしょうか。
こんなこと、日本の学校では教えません。「4」という答の出し方までしか教えません。でも欧米では違います。
この二つの4は同じか、あるいは違うか? 違うのであれば何が違うのかを(例を挙げて)説明しなさい。
そんな問題が小学4年生のテストに出るんです。ためしに30秒だけ考えてみませんか? 近くの友だちと相談してもかまいませんよ。
たとえばリンゴを例に挙げると、次のような回答ができそうです。
足し算の「4」と掛け算の「4」は違います。
足し算は、同じ物しか足せません。だからリンゴ2個に足すのはリンゴになります。リンゴ2個が加わって「リンゴが4個に増えました」です。一方掛け算は、リンゴ2個にリンゴ2個を掛けるわけではありません。2人の子どもに2個ずつのリンゴをあげるために「リンゴは4個必要になる」のです。
もう一つの回答例を紹介してみましょうか。
2メートルと2メートルを足すと「4メートル」です。これは長さです。
でも2メートルに2メートルを掛けたら、答は「4平方メートル」。面積になります。
長さと面積は、全く次元が異なります。
こうして考えてみると、足し算の「4」と掛け算の「4」は次元の異なる答だと分かります。たとえて言えば、足し算の「4」は1次元レベル、掛け算の「4」は2次元レベルです。
日本の学校では答のレベルが違うことについて考えることもないため、レベルの違いが分かっていない人も多いですね。
3次元以上のレベルとは?
たとえば、友だちと話していて、相手と全く話が噛み合わなくて「あいつの話とこちらの話はレベルが違うな」って思うことはありませんか。
具体的に言うと、自分の側からだけしか考えられない人は1次元レベル。相手の立場からも考えられる人は2次元レベルです。
厄介なのは自分の側からしか考えられない自己中心的な「1次元レベル」の人。そんな人が犯罪を犯した時、裁判長は裁判でこんなことを言いますね。
「あなたがやったのは、自己中心的で自分本位で、他人のことを考えない残酷な行為だ」と。
無着さんによれば、2次元レベルの上に3次元、4次元レベルの人もいるのだそうです。
相手だけでなく、過去の歴史や未来を考えながら判断できる人は「3次元レベル」。さらに神様や仏様の視点からも考えられる人は「4次元レベル」だとか。
せめて2次元以上のレベルでありたいな、と感じたことを覚えています。
追記
本記事は『同じ「4」でも次元が違う~子どもは誰でも大人になれるのか?』(無着成恭、『みやざき中央新聞』(現『日本講演新聞)2009年1月1日号掲載、2021年6月21日号再掲載)を、中高生向けの講話として加筆、再構成しています。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(50) 日の丸に込められた日本の心
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