前回は、古事記の「天孫降臨(てんそんこうりん)」神話を例に挙げ、その意味するところを考えてみました。
今回は、私が『お父さん、日本のことを教えて!』(赤塚高仁著)を皆さんに勧める理由を話すことにしましょう。
※ 前回の記事はこちら >あとからくる君たちへ(53) 『お父さん、日本のことを教えて!』_2 ~「天孫降臨」神話に込められた意味~
目次
孫に勧めたいかどうか、が評価基準
この「あとからくる君たちへ」シリーズで、何かを皆さんに勧める際の評価基準はいたってシンプルです。その基準とは、「自分の孫に勧めたいかどうか」ということ。
私がこの本のことを知ったのは、2022年1月の『日本講演新聞』で、赤塚さんの『「宇宙開発の父」が教えてくれた日本の神話の大切さ』という講演記録を読んだのがきっかけでした。
以前から孫たちのために、学校で教えてもらえない日本の歴史と伝統を紹介してくれる本を探していた私は、すぐにネットで注文してみました。
配達された本書は私の心を揺り動かし、強い感銘を与えてくれました。「これなら孫たちに自信を持って勧めてやれる」と判断し、本記事を書き始めたわけです。
平易で分かりやすい書きぶり
本書は「中高生や大人たちが知っておいたほうがいい、私たちの国の歴史」について、Q&A形式で説明するという体裁をとっています。使われている言葉や言い回しも難しい専門用語を避け、できるだけ日常的な表現が使われています。
一つ例を挙げてみましょうか。たとえば、『「天皇は日本の象徴」とは、どういう意味ですか』という質問が取り上げられています。大人でも答えるのが大変な難問です。
赤塚さんは、まず『「天皇が日本の姿をあらわしている」という意味です。』と簡潔に回答し、根拠となる日本国憲法を紹介した後に、桜やニキビを例に挙げ次のように説明しています。
本体は手にとったり触れたりすることはができないけれども、象徴には触れられます。それが象徴の意味するところです。
「桜は日本の象徴です」。日本には触れられないけれども、桜には触れられます。
‥‥(略)‥‥
「ニキビは青春のシンボルです」。青春には触れないけれども、ニキビには触れられます。‥‥(略)‥‥
「天皇は日本の象徴です」と言ったら、日本には触れられないけれでも、天皇を見れば日本がわかるということです。天皇は日本の姿そのものです。
小学生にもわかるスッキリした喩(たと)えです。そして、ストンと腹に落ちてきます。赤塚さんが自分で調べて考え抜き、自分の言葉で説明していることがよく分かります。
たとえ話や、実例、赤塚さんの体験などが総動員され、若い皆さんに「何としても理解してもらいたい」という思いが伝わってきます。
本書で取り上げられた質問は全部で39。中高生の皆さんが一度は抱く、なかなかすっきりと答えてもらえないテーマがずらりと並んでいます。
たとえば、
- 神話は、本当のことですか
- (初代)神武天皇は、本当にいたのですか
- 日本では、どうして祖国を誇りに思う教育を学校でできないのですか
- 日本人はなぜ、年末にクリスマスを祝い、正月には寺にも神社にも行くのですか
- 「女性天皇」と「女系天皇」の違いは、何ですか
- 日本人は、どうして自分の意見をはっきりと主張しないのですか
どの質問にも分かりやすく丁寧な答が用意されています。恥ずかしいことですが、まもなく70歳になる私も初めて知ることがいくつかあり、大変勉強になりました。
日本が好きになり、自信と誇りが湧いてくる一冊
私が本書を勧める2番目の理由は、読み終えると日本に対する自信と誇りが湧いてくること。日本が好きになり、日本人に生まれて本当によかった、と思えることです。
祖先に対する感謝の思いが自然に湧き、自分も手渡されたバトンを引き継いでいかねば、という気持ちが芽生えてきます。
個人的な話になりますが、私たちの世代(おおむね65歳以上の世代)は「日本は戦争を起こした悪い国だ」「戦前の古いものは全て悪い」と教えられ、信じ込まされてきました。
反省と謝罪を繰り返す指導者を見るたびに、「やっぱり日本はダメなんだ」と自虐(じぎゃく、=自分を傷つけしいたげること)的な気持ちを持ちつづけてきたのです。
自分の国を好きになれないこと、自信と誇りを持てないことは悲劇です。家庭にたとえてみればよく分かります。「わが家は過去に悪いことをした家庭だ。おじいさん達がやってきたことは、全て悪かった、ごめんなさい。」とあなたの両親が周囲にあやまってばかりいたら、子どもはどんな気持ちになるでしょう(私達の世代の場合は、「お前の父親が悪いことをした」と言われてきました。)
祖父(父)がやったことと自分にどんな関係があるのだろうか、祖父(父)の罪を自分が反省し謝罪しなければならないのだろうか、とまず考えます。もし本当に悪いことをしたのなら仕方がないのかもしれません。しかし、もしそうでなかったとしたら‥‥。
私が「日本という国、日本人は本当に悪いことをしたのだろうか」という疑いを抱き、自分なりに歴史を少しずつ勉強し始めたのは50歳の頃。ひとつひとつ調べていき、ジグソーパズルを組み立てるような作業の末に、世界に類を見ない日本の素晴らしさが分かってきたのは、何と50代半ばでした。
半世紀近く間違った歴史を信じ込まされてきました。ずいぶん人生を無駄にしたものだ、とつくづく感じています。
本書を知り、「自分が中学生の時にこの本に出合っていたら、人生は大きく変わっていただろうなぁ」と実感することしきりです。
「五箇条の御誓文」、「教育勅語」、国民の幸せのために日々祈りを捧げてくださる天皇陛下の祈り‥‥。本書を読むと、2600年間も続いた日本という国の本質と秘密が少しだけ分かってきます。
おや、もう予定の文字数を越えてしまいました。次は、「どうして日本では学校で祖国を誇りに思う教育ができないのか」についてお話ししましょうか。
では、また。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(55) 福島フィフティ、家族とふるさとを守り抜いた人たち_1
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