サンプル取得に挑戦するはやぶさ2の想像図
(画像:池下章裕、出典:JAXAデジタルアーカイブス)
小惑星探査機「はやぶさ2」が2月22日午前7時29分、地球から3億4千万キロ離れた小惑星「リュウグウ」の着地に成功したと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表しました。地表の物質を採取できていれば、生命の起源の謎を解くヒントが得られることになりそうです。
3億4千万キロ先の小惑星と言われても、あまりに大きな数値で見当がつきません。JAXAによれば、「日本から2万キロ離れた南米チリにあるアルマ望遠鏡施設、そこで食べる目玉焼きの黄身に着地するような精度」が要求されるそうです。
また、今回の着地の難しさは「上空20㎞…飛行機の飛ぶ高さの2倍ぐらいの所から、甲子園球場の “マウンド” に降りるようなもの」(JAXA 津田雄一プロジェクトマネージャー談)と言われています。
昨年の10月に実施するはずの着地が5ヶ月も遅れたのは、リュウグウの予想もしていなかった地表の様子でした。地表は大小の岩石で覆われ、やっと見つけた開けた平地は半径3メートル。上空20kmからそこにぴたりと着地を決めなければ、ミッションは達成できません。
この5ヶ月間、プロジェクトチームは着陸する場所を丹念に選定し、安全確実に着地させるために知恵とアイディアを出し、訓練を重ねてきたということです。着地地点の「岩の数、高さまでしつこいくらい観測し」、粘り強く挑戦し続けた末の成果でした。
人は予期せぬ困難に直面した時、できない理由を挙げて諦めがちとなります。しかし、はやぶさ2のチームは果敢に挑戦する道を選択したのです。スタッフの勇気ある挑戦に心からの敬意を表したいと思います。
高い目標をめざす勇気ある挑戦は、成功すれば自信と誇りを生み、携わった人を大きく成長させてくれます。仮に失敗したとしても、それは貴重な経験として蓄積されていきます。
「挑戦が力を生み、継続が力を深める。」JAXAの小惑星探査機 はやぶさ2 特設サイトには、この言葉がページのトップに記されています。
はやぶさ2は年末までにさらに2回の着地を試み、地表からのサンプル採取だけでなく、爆薬を使って人工クレーターを作り、惑星内部のサンプル採取にも挑戦するそうです。
2020年末、東京オリンピック閉幕後に帰還するはやぶさ2は、我々にどんな世界を見せてくれるのでしょう。
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