前回は木下晴弘さんの「受験は団体戦」のエピソードを紹介しました。
木下さんは、これとは別に『涙の数だけ大きくなれる!』(フォレスト出版)という著書でも、似たような事例を語ってくれています。
※ 前回の記事はこちら >あとからくる君たちへ(46) 「受験は団体戦」、カリスマ講師が語る不思議な体験
目次
ガンはなぜV字編隊で飛ぶのか?
ガンは翼を広げると約150cmにもなる大きな水鳥です。寒い季節になると、数千キロも遠く離れた北の国 から、何日もかけて日本に飛んできます。
ガン(を含めた大型の渡り鳥)は、アルファベットの「V」の字のような編隊を作って長距離を飛行します。
なぜガンがVの字になって飛ぶのか。その理由について、木下さんは次のように説明しています。
先頭のガンが羽ばたくと翼の周りに上昇気流が起きる。するとその後ろのガンは、その気流の力を借りて少ないエネルギーで飛ぶことができる。さらにそのガンが羽ばたくと3番目のガンは、もっと楽に飛べるようになる。だからガンはV字編隊で飛ぶんだ。
木下さんの説明とは別に、「25羽の鳥がV字でつながって飛ぶと、同じエネルギーで70%も飛行距離を伸ばせる」という記事も見つけました。
仮に1000km飛ぶ力のある鳥なら、1700kmまで飛行距離を伸ばすことが可能というわけです。
ガンがV字編隊を組むのは、飛ぶためのエネルギーを節約し、より長い距離を楽に飛行するための本能的な行動のようです。
誰が先頭を飛ぶのか?
この話を知った私は「事実かどうか確認したい」と思い、インターネットで情報を集めてみました。
すると、ロンドン大学の調査チームが「渡り鳥(ホオアカトキ)と一体になって」実証実験を行い、V字編隊のメカニズムを解明した論文(英文)の記事を見つけました。GPSと超小型の加速度記録機(?)を使った本格的な実験でした。
他にも科学系サイトに同様の記事が掲載されており、実験動画もYouTubeに公開されています。どうやら、木下さんの説明は事実のようです。
私が次に知りたかったのは、「どんな雁が先頭を飛ぶのか」ということ。一番先頭のガンには前の鳥の助けはありません。損なポジションで疲れるばかりだからです。
恐らく体力と経験を兼ね備えたリーダー格の鳥が先頭を務めているのだろう、と私は勝手に思いこんでいたのです。
結論は、全員が交代で先頭を担当しているとのこと。つまり、先頭のガンが疲れたら楽な位置に後退し、2番目のガンが先頭に立ちます。2番手が疲れたら後ろに下がり、3番手が先頭に立つ。それぞれが苦しく負担の大きな先頭の役割を、公平に分担しているそうです。
この方法を繰り返すことで、ガンは単独で飛ぶよりはるかに長い距離を飛ぶことができるわけです。
ガンのV字編隊が示唆するもの
「渡り」という共通の目標を持った鳥たちがV字編隊を作り、集団の力を利用して個々の能力以上のパワーを発揮する。損なポジションである先頭は、チーム全員が入れ替わり立ち替わり交代で担当する。
渡り鳥のV字編隊は、私たちに大きな示唆を与えてくれるような気がします。
一人だけでは成し遂げられない大きなことが、チームの力、個々の助け合いで達成できる。このような実例は、学校や社会で数多く見ることができます。あなたが学校で生活する意味、大人が組織で仕事をする意味はこのあたりにありそうです。
もしガンがそれぞれ勝手に飛ぶとどうなるか。結果は「受験は団体戦」の京都C教室から明らかです。
人は長い歴史の中で、家族や所属する集団、社会のために助け合い、支え合って生きてきました。
そのことに思いをいたすと、我々は自分の前を飛んでくれた多くの「ガン」によって支えられ、助けられてきたことに気づきます。
そして、いつかは一番苦しい先頭を飛ぶ責任があることも分かってきます。
助けられる側でなく、あなたが誰かを支える側に立つ日がいつかやってきます。70年近く生きた私には、そのことがよく分かるのです。
※ 参考
- 『涙の数だけ大きくなれる!』(木下晴弘、フォレスト出版)
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New research proves that birds in V formation arrange themselves in aerodynamically optimum positions
- 渡り鳥が「V字隊列」を保って体力を温存する本当のメカニズムとは
- NPR: The Science Of The “Flying V” Formation
※ 興味のある方は、渡り鳥のV字飛行の映像(4分22秒)もどうぞ。鳥たちのけなげな飛翔の姿を見ると、元気が湧いてきます。
◆本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(48) 「成功するにはどうしたらいいの?」
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