崩壊寸前の英彦山上宮(出典:英彦山神宮公式サイト)
以前お世話になった登山ガイドさんからメール・マガジンをいただいた。その中に、英彦山上宮修復工事(本年7月着工予定?)に伴う登山制限(案)の記事があった。
目次
工事期間中の「登山制限案」とは
立入禁止となった上宮社殿(出典:英彦山神宮公式サイト)
紹介記事には、日本山岳協会北九州支部の会 支部報97号(2022年1月発行)掲載記事からの抜粋とある。
さっそく、同協会北九州支部のサイトで探してみると、確かにp.20に当該情報が紹介されている。情報源は「英彦山上宮社殿修復整備工事に関する協議会」とのこと。まだ検討中の事案でもあるため、決定を待って正式発表されるそうだ。
※ 公益社団法人 日本山岳協会 北九州支部 支部報アーカイブ
発行者の了解は得ていないが、ウェブサイトで広く公開されていることもあり、本ブログでもその概要を紹介させていただくことにした。
上宮修復工事に係る登山制限等(検討案)は次のとおり。
- 英彦山上宮の社殿修復工事が、令和4年7月より令和8年7月まで実施予定
- 工事に伴い、中岳山頂休憩所/社殿周囲の平地が全て資材置き場となり、中岳休憩所(バイオトイレ)を含む一帯が工事関係者以外進入禁止となる模様
- 資材搬入用モノレールが、英彦山野営場から北西尾根ルートに沿い中岳山頂まで設置される。安全確保のため、北西尾根ルート・バードラインも進入禁止の予定
- 中岳上部が閉鎖されるため、北岳から南岳までの往来不可。
- 中岳・北岳・南岳それぞれの登山ルートで、工事現場への進入禁止ゲートを設置する予定。
(出典:公益社団法人 日本山岳会 北九州支部 『JAC北九だより No.97(令和 4 年 第 1 号)』)
もしこの案どおりの規制が行われれば、今後4年間、中岳への登頂及び「北岳~中岳~南岳」の通行はできなくなる。さらに、中岳山頂を経由する複数の周回ルートの利用も断念せねばなるまい。
修復工事がまもなく開始されることは、ニュースや新聞記事で知ってはいたが、ここまで大規模な工事とは予想もしていなかった。資材はヘリコプターで空輸し、上宮周辺は立入禁止となるが、工事現場を迂回する登山道が設置されるだろう、と安易に考えていたのだ。
崩壊寸前の上宮社殿
朝日新聞(2021年6月23日)によれば、今の上宮社殿は1840年代に佐賀藩主の鍋島斉正が建てたとされる。
だが、「1991年の台風19号で防風林が倒れ、台風や豪雨のたびに壁や屋根が傷んだ。板やシートで応急処置はしたが、昨秋(2020年)の台風で風雨が中を吹き抜け、柱まで傾いた。倒壊の恐れがあるとして、(2021年)3月末に立ち入り禁止になった」そうである。
英彦山神宮のウェブサイトでは、損壊著しい上宮の様子がドローン撮影による動画で紹介されている。
◆ 英彦山神宮上宮の動画(3分14秒)
動画でお分かりのように壁ははがれ、柱は傾き、屋根の銅板は飛ばされ大きな穴が空いている。見るも無惨なありさまで、訪れるたびに悲しくなってくる。
壁板がはがれ落ちた社殿(出典:英彦山神宮公式サイト)
数ヶ月前に修復工事のニュースを聞き、ホッと安堵していたところだ。総工費7億円と聞いたが、よく集まったものである。
英彦山は、福岡県民にとってはなじみの深い山。高校入学直後に行われる「規律と友情の体験学習」(2泊3日)では、高校生としての自覚を深め友情を育む伝統行事として、英彦山青年の家で合宿が行われてきた。そして、どの高校でも2日目の英彦山登山が定番行事だったと思う。
入学直後でまだ顔も名前も定かでない1年生同士が、互いに励まし合って登頂を果たし、山頂広場で仲良く弁当を平らげた思い出の山。英彦山は、次世代育成のためにも長く保護しておきたい大切な山である。
4年間の工期は長いが、立派に修復された社殿が蘇ると思えば、我慢のしがいもあるというもの。
これから新緑が美しい季節となる。工事が始まる前に英彦山に出かけ、しばしの別れを惜しむとしよう。
花見ヶ岩公園から望む英彦山(出典:福岡県立英彦山青年の家)
追記
◆2022年7月5日
英彦山神宮公式サイトから、修復工事の工期、登山制限の詳細が発表(2022年7月4日付)されています。拙ブログでも関係記事をアップしていますので、ご参考までに。
[…] 英彦山、上宮修復工事に伴う登山制限をまもなく実施か? […]
[…] 本ブログでは、本年4月14日に「英彦山、上宮修復工事に伴う登山制限をまもなく実施か?」という記事をアップし、上宮修復工事の期間、登山制限の予定を紹介させていただいた。 […]