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はやぶさ2が地球に戻ってくる!
今日は2020年12月4日。あのはやぶさ2が地球から約3億km離れた小惑星「リュウグウ」の探査を終え、6年ぶりに私たちのもとに戻ってきつつあります。
はやぶさ2は、明日12月5日午後2時30分頃、地球までおよそ22万キロまで迫ったところで「リュウグウ」の岩石の破片が入ったと思われるカプセルを切り離します。
その後、日本時間の12月6日未明、カプセルをオーストラリアの砂漠に落下させるそうです。
宇宙科学や天文学には全く素人の私ですが、はやぶさ2の1回目のタッチダウン(接地・サンプル採取)に全力で取り組むJAXA(宇宙航空研究開発機構)担当チームの熱意に胸を打たれ、その様子を紹介したことがあります(2019年2月、その時の記事はこちら)。
その4ヶ月後に行われた2回目のタッチダウンは、さらに困難を極めたと知り、皆さんにぜひ紹介したいと思いました。
1回目のタッチダウン、許される着陸誤差は3m
はやぶさ2のミッションの目的は、地球から約3億km離れた小惑星「リュウグウ」の地下サンプルを採取して帰還すること。そのためにはどうしても「リュウグウ」に着陸(正確には接地)する必要がありました。
実際に「リュウグウ」に着いてみると、ゴツゴツの岩だらけで、津田プロジェクトマネージャーが「牙を剥(む)いてきた」と表現するほどの厳しい世界でした。直径100mの平らな場所にタッチダウンする予定が、実際に探すことができたのは直径6mほどのスペースだけ。
少しでも着地がずれると、探査機本体や太陽電池パドルが岩にぶつかってしまい、損傷する恐れがあります。誤差3m以内の精度が要求されるとてつもなく難しいチャレンジでした。
結果的にはタッチダウンは見事に成功し、地表のサンプルも回収できたと考えられています。着陸誤差はわずか1mだったとか。
2回目のタッチダウン、50年に一度のチャンスをつかみ取れ!
第1回タッチダウン成功後、JAXA内部では難易度の高い2回目のチャレンジを諦め、後は上空からの観測にとどめて地球に帰還してはどうか、という意見が出始めたそうです。2回目のタッチダウンはさらに困難な課題を克服する必要があり、万一周囲の岩石に衝突すれば機体が損傷し、全てを失うリスクがあるからです。
これに対し、津田プロマネをはじめプロジェクトチームは「決して諦めたくない、未知への挑戦をやりとげるのだ」という強い意志で着々と準備を進めていました。
安全で危険も失敗もない道と、リスクはあるが夢の実現をめざす道‥‥。リスクを承知でタッチダウンに踏み切った決断、それをを支えたものは何だったのでしょうか。
プロジェクトのサイエンスチームを統括する渡邊誠一教授は、当時の担当チームの様子を次のように語り、第2回タッチダウンを強く後押ししています。
自ら作ったできたてのクレーターを目の前に着陸地点を吟味するようなことを、人類がこの50年や100年のうちに実現するとは全く思っていませんでした。今私たちはそれをやっているのです。
この状況を実現した工学メンバーのチーム力、士気の高さは本当に感動的です。そういったものに支えられたディシジョン(「決定」、引用者注)は信頼するし、サイエンスチームは全面的に支持します。(『はやぶさ2最強ミッションの真実』(津田雄一著、NHK出版)
「人事を尽くして天命を待つ」
2回目のタッチダウンは地表に人工クレーターを作り、掘り出した地下のサンプルを採取するというもの。遠く離れた「リュウグウ」は電波の往復に40分近くもかかってしまうため、地球からの遠隔操作では間に合いません。はやぶさ2が自分で判断し制御できるようにするしかないのです。
難易度は、1回目より数倍アップ。これまで誰もやったことのない未知の世界へのチャレンジです。
第1回タッチダウンから4ヶ月余りの期間、スタッフは「やれることは全てやる」意気込みで準備に取り組んだといいます。着地地点(周囲)の1万以上の岩の高さを「しつこいくらいに」調査し、「しつこく」訓練を重ねてきたとか。「人事を尽くして天命を待つ」心境だったでしょう。
こうして2019年7月に決行された2回目のタッチダウンは見事に成功。地球外惑星の地下サンプル採取という、人類初の快挙が達成された可能性が高いのです。着陸精度は誤差60cmというから驚くしかありません。
リスクをとるというのは、一か八かの賭けではありません。リスクをとる選択を行う時、何が自分を支えてくれるのか。はやぶさ2は、私たちに貴重な示唆を与えてくれています。
明後日未明に迫ったカプセルの無事帰還を祈りたいと思います。
はやぶさ2関係サイト
※ JAXAのはやぶさ2プロジェクトサイトはこちら >
※ はやぶさ2の地球帰還説明CG動画(2分54秒)。
分かりやすく、迫力ある映像です。
※ 「はやぶさ2」ミッションCG(小惑星リュウグウ到着から出発まで)はこちら >
4分40秒頃から第2回タッチダウンの様子が描かれています。
本シリーズの次の記事はこちら >あとからくる君たちへ(42) 「人と成る」ための二つの条件とは
◆本シリーズの他の記事はこちら >シリーズ「あとからくる君たちへ」関連記事へのリンク