前回は一斗缶で燻製器を作ろうと思った動機と、一斗缶燻製器のメリット及びデメリットの話題であった。今回は、実際に一斗缶燻製器をどのようにして製作したか、材料集めと加工・製作の実際の記事である。
※これまでの燻製づくりの記事はこちら
> シニアの家めし(24) キッチンで燻製を作ってみる
> シニアの家めし(25) キッチンで燻製を作ってみる_2
> シニアの家めし(27) 一斗缶で燻製器を自作する_1
目次
製作の実際
動画で製作の実際をチェック
まずは製作手順と作業の実際を把握するため、YouTubeで数本の動画を視聴してみた。
※一斗缶燻製器の製作動画例
前回紹介した服部弘氏が製作・販売している燻製器の製作動画(1分55秒)
動画を視聴すると、簡単に短時間で製作できるように見える。これなら不器用な小生でも、問題なく作れそうだ。
要は次の4つのステップを踏めばよいのだろう。
- 罫書(けが)きをする
- ドリルで穴を開ける
- 穴のバリ(ギザギザ状の出っ張り)を取る
- ボルトを締め、網と温度計をセットする
作りたい燻製器のイメージを明確にする
次に、自分が作りたい燻製器のイメージを明確にしておく必要がある。
具体的には、食材を載せる網は1段か2段か。開ける穴(吸気穴、排煙のための穴、網を支えるボルトを通す穴、吊し棒を支える穴)の大きさ、数、位置を決めなければいけない。
一斗缶燻製器など作ったことがないので、全く分からない。よって、食材をのせる網は2段とだけ決め、後は製作経験者の真似をさせていただくことにした。
幸い上記動画をアップされた服部氏のウェブサイトに図面が公開されていたので、この通りに罫書きをし、二段目の網のボルト穴を追加した。
※一斗缶燻製器の図面(出典:CLUB SMOKE)
1段目の網は上端から10cm、2段目は20cmの位置にマジック印でつける。他は上の図面の水色の部分にマーキング。全部で22個の穴を開けることになる。
材料の入手
各材料の入手については、次のとおり。
一斗缶(角フタ付き)
自宅に一斗缶があるか、譲ってくれる知人がいれば問題はない。しかし一斗缶もなく知人もいない小生は、DIYの店で購入せざるを得なかった。
塗料売り場で販売していたので、スチール製で蓋付きのものを986円(税込み、以下全て同じ)で購入。
角網
一斗缶の外寸は 238mm×238mm。これに合うサイズの角網は 220mm×220mm のものだが、これが中々見つからない。百円ショップ、ホームセンター等を数軒探したが見つけられなかった。
結局、ネット通販で「飛騨コンロ用 アミ 19A16 亜鉛引 (7号用) 22cm」という商品を205円/枚で購入。届いた物はしっかりとした作りで耐久性はありそう。
後日、百円ショップ・セリアの「べんり焼き」という網を利用すればよいと知ったが、網はちゃちな代物(しろもの)であった。
ネジ、ナット、ドリルの刃等
スパナを1本しか持っていないため、ボルトではなく鍋ねじを選択。これならプラスドライバーとスパナ1本で作業できる。缶側面の出っ張りもボルトほど目立たない。
鍋ねじ(直径6mm)、ワッシャー、ナットの6本セットを2袋購入(106円/袋)。ネジの長さは、下段の網が取り付けやすいように25mmを選択した。
ドリルの刃は金属加工用の直径6.5mmが売り切れだったので、直径6mmを595円で、ポンチは188円で購入。
他店に立ち寄ってでも6.5mmの刃を買えば良かった、と後で後悔させられた。ネジの直径より少し大きめの穴を開けるのが常識らしい。
スモーカー用温度計
長時間いぶす温燻をやるには、温度管理のために温度計が必要と知り、角網と合わせてネットで購入。評判のよいSOTOのスモーカー用温度計(新富士バーナー社)を858円で購入。
費用総額
かかった費用は次のとおり(金額はすべて税込み)。ドリルの刃とポンチが自宅にあるのなら、2,000円台。一斗缶がタダで入手できるのなら、1,500円程度で作れそうだ。
一斗缶(スチール製、天切り・蓋付き) | 1個 | 986円 |
角網・亜鉛引き飛騨コンロ金網7号 | 2枚 | 410円 |
鍋ネジ+ナット(6M×25mm) | 2袋 | 212円 |
スモーカー用温度計 | 1個 | 858円 |
竹串(10本、吊し棒に使用) | 1袋 | 110円 |
ドリルの刃(6mm) | 1本 | 595円 |
ポンチ | 1本 | 188円 |
合 計 | 3,359円 |
実際に燻製を作るには、この他に熱源(カセットコンロや電熱器)、スモークチップかウッドが必要となる。
工具を準備し、作業する。
必要な工具
実際には、電動ドリル、ドリルの刃(鉄鋼用)、ポンチ、、やすり(金工用)、スパナ、プラスドライバー等が必要になる。
やすりは、ドリルであけた穴のバリ(ギザギザ状の出っ張り)を削り落とすために使用。バリを落とさないと、手を切ってケガをする恐れがある。
穴あけ加工を楽にきれいに行うために、加工部分を下から支える台(角材等)を用意した方が良い。
作業を終えた感想
出典:SMOKY FLAVOR
実際の作業は冒頭の動画をご覧になれば、一目瞭然なので省略。
ここでは、実際に製作(?)をした感想を述べておきたい。
端的に言えば、小生のような不器用な素人が作ると意外に手間暇がかかる、という当たり前のことを体感した次第。恐らく工具と加工経験がある人には、たやすい作業だと思う。
- 工具がないと手間暇と費用がかかる。
自宅にたまたまドリル(充電式)があったので、製作に踏み切ったが、それでもポンチとドリルの刃は購入した。
事前にやすり(金工用)、スパナ、プラスドライバー等、工具の確認をしておいた方がよい。 - 作業場所を確保しておくこと
マンションのベランダで作業を始めたが、すぐに寒さに震え上がり、結局は暗くて狭い玄関の三和土(たたき)で作業を行った。
ホームセンターで工作室や工具をレンタルしてくれる所もあるので、使える方は利用した方がよい。 - バリ落としのやすり掛けが大変
一番手間暇がかかったのは、穴あけ部分のバリ落とし作業。
合計22個の穴をきれいにするのに30分以上かかり、缶表面にずいぶん傷をつけてしまった。
加工部分を下から支える台(角材等)を当てておけば、きれいな穴があきバリも少なくてすんだようだ。
リーマーという工具を使えば、楽にバリ落としができるらしい。 - 製作時間は次のとおり
罫書きをする(10分)→穴をあける(10分)→やすりをかける(30分以上)→ボルト(ネジ)を締め込む(5分)
忙しくて燻製器を自作する時間などない方、すぐ燻製を始めたい方は、自作より市販の入門キットを購入された方がよいと思う。
※ 冒頭動画を作成した服部弘氏のウェブサイトSMOKY FLAVOR でも「一斗缶燻製器スターターKIT」が商品化されていた。参考までに。
少しばかり苦労はしたものの、自分で作った燻製器を眺めるとにんまりしてしまう。次は、こいつでベーコンを作る楽しさを味わうとしよう。
◆本シリーズの次の記事はこちら >シニアの家めし(29) 味噌16kgを一人で作る、ミンサー導入顛末(てんまつ)記
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